2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧
「ガフサさん、きょうのごきげんはいかが」 「めちゃくちゃよ。なんていう一夜だったのでしょう!わたし、あなたのことばかり考えていましたわ。・・」 ・・・。 「わたし、気になって気になって、ひと晩じゅうあなたに、お電話していたんですよ。それなのに…
秋 秋は透明な 薄いむらさきだ むらさきの秋は 騒がしいものを寄せつけない 体の透きとおる人をだけ そおっと淋しくなでるのだ むらさきの中では 淋しがりやだが 強い死なない人だけが 首をたれて 落葉をハラハラと浴びるのだ 矢沢宰『光る砂漠』より きちん…
初めて『モモ』を読んだのは、20代の頃だった。その時の私には[モモの孤独]が強く胸に迫ってきた。それから20年ほど後に、またこの物語を手に取った。とても大事な何かを知って、けれどそれを誰にも伝えることができない。そんな孤独に陥るたびに開かずには…
雪国ゆ蜜柑の国に帰り来て木犀の花咲く頃となる 花好きの老いたる母の喜びし燈色の花木犀ひらく りんりんとかすかな風に身ふるはせ金の鈴鳴る鈴の音こぼる うつむきて路ゆきをれば足下に燈色の花 大空見上ぐ 木犀のかをり途絶へて足元に花敷き詰めぬ 秋移り…
欠落は大いなる欠け 咲ける花まだ降り止まず枝にしあれば 木犀の金の四瓣はヴィーナスの四方に撒ける天なるひかり風に身をふるはせて鳴る MOKUSEI は全きものにあるべし永久に[[[
テンプル・グランディン著『自閉症の才能開発』(学習研究社)、この本は、高機能の自閉症者であるテンプルさんご本人が書かれた書物で、自閉症について論じた書物の中で最も画期的なものであると私は思う。この本の巻頭にはこう書かれている。 「この本を母…
垣根の木 刈られて落ちてふかふかとフィトンチッドただよはせをりフィトンチッドは植物が傷つけられたときなどに揮発させる化学物質で、(cide)は「殺す」という意味を持つらしい。傷つけられたところから細菌などが侵入して、樹木そのものがだめになってし…
文語にて歌を詠みゐてふと思ふ むかしびととの深き断絶昔の言葉で歌を作りながら、もうほとんど、これは私たちの言葉とは全く違うと思うことがある。 難しさは色々あるが、一番難しいと思うのは、過去の助動詞「き」ではないかと思う。何か馴染んでいて頻繁…
こんな歌を作った。夢に見き 誠之介が傘下に微笑みてのちゆっくり消えたここは、完了の「ぬ」を使うべきなのかも知れない。でも、カ行の切れの良さが欲しかったので「見き」とした。誠之介は明治44年に処刑された人物なので、その人物が夢から消えると同時…
遠き日の娘の笑顔思ひ出づれば苺の苗を買つて帰りぬ ↓ 遠き日の娘の笑顔覚ゆれば苺の苗を買つて帰りつ 毎年、梅のジュースを漬ける。苺の苗を植えて苺を収穫する。よくよく考えてみれば、母が私のためにしてくれていたことだ。私はそれを真似ていたにすぎな…
介護日誌 ま夜二時に洗濯機まはす盲(めしひ)の老い 「部屋にお連れして添い寝」と記す 祈り ひざまづき祈りて一日始まりぬ 祈らずはふかき愛を保てず この二首が続けて載せられているところに、歌人の伝えようとする思いの深さが表れているように思う。 夜…
あさのつゆ 人のあいはあさのつゆ 吾のあいもあさのつゆなれ 聖書(ホセア書6:4)の中には、こんな言葉がある。 あなたがたの誠実は朝もやのようだ。朝早く消え去る露のようだ。(新改訳聖書) お前たちの愛は朝の霧 すぐに消えうせる露のようだ。(新共…
苦しみの根源は愛せぬことと 泣いて語れる人見て思ふも 愛せぬは苦しみの根源なれば流涕するを目前(まえ)に黙せり 人の苦しみは様々だろうと思う。死を前にした苦しみ。肉体的な痛みを伴う苦しみ。けれど、人との関わりの中で生まれてくる苦しみは、「愛す…
朝露や 生まれた愛の行く末は お前たちの愛は朝の霧 すぐに消えうせる露のようだ。(ホセア書6:4) 振り返ると、すぐ目の前に氷のような眼、蒼白の顔、恐怖で引きつった唇が見えた。深夜ミサの人ごみの中ではじめてそばで彼を見たときと変わっていなかっ…
あさがほの紅ひそませて青く開(さ)く あさがほの紅(べに)滲ませてしぼみゆく 西洋朝顔がまだ咲いている。 でも、朝顔は秋の季語。まだ、季節だ。
[ 近くのスーパに買い物に行くのに、買ったものを入れられるような大きなエコバッグを持って行っていた。ある時、「オリゴ糖の割引期限はいつまでだったろう」と財布の中の割引券をチェックして、おまけに、「こっちのオリゴ糖と割引のオリゴ糖とは実際どっ…
[ 豚物をコレクションしている友人から教えてもらった洋服のブランド、DRUG STORE'Sの商品。この前まで大汗かいて夏バテしていたのに急に寒くなって何か上着が欲しいと思い、タンスから出してきた。今の季節、ちょこっと出掛ける時に、だぼっとはおるのにと…
宙空(ちゅうくう)の虹はキリスト 枝先に黙(もだ)してかかる木の葉の如きこの歌は、葛原妙子の次の短歌を本歌として作ったものだ。 十字架に頭(かしら)垂れたるキリストは鄢き木の葉のごとく掛かりぬ 『縄文』 葛原妙子という人は、死の数ヶ月前にカト…
藭殿の稲妻ならねラジウムのアルファ・ベーター・ガンマー放射線(レイ) 「鷹の井戸」 葛原妙子のこの短歌の「ね」は、断定の助動詞「なり」の未然形についた打ち消しの助動詞「ず」の已然形だろうから、この後には「ども」か「ば」が省略されている。けれ…
日本のシンドラーと呼ばれる杉原千畝が、女川原発とどう繋がっているかは、仙台にお住まいのBlue jetさんのブログをご覧ください。 ↓ http://plaza.rakuten.co.jp/bluejet/diary/201110010000/ 平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ば…
あきづきといふ名の丸い梨食みて今宵いざよふ月となりたり 福島から“あきづき”という梨が送られて来た。東北大学の協力を得て福島市が独自でしている放射性物質の調査で安全性が認定されたという市長の証明文と和合亮一氏の詩を載せた紙が添えられていた。桃…
[ 秋日差し 朝の天井影明かし サラサラと音を立てたる秋の日差し
ひとかごの花野にゆふべ遊びけり 花野(はなの)は、秋の季語。 様々な秋の草花の野原。 写真は、朝顔、チェリーセージ、こむらさき、小みかん草。 小みかん草は日が翳ると葉を閉じる。葉の裏側に実。葉の先っぽには小さな小さな花が咲いていた。茎の下側か…