風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

燈色(とういろ)の花

雪国ゆ蜜柑の国に帰り来て木犀の花咲く頃となる
花好きの老いたる母の喜びし燈色の花木犀ひらく


りんりんとかすかな風に身ふるはせ金の鈴鳴る鈴の音こぼる


うつむきて路ゆきをれば足下に燈色の花 大空見上ぐ
木犀のかをり途絶へて足元に花敷き詰めぬ 秋移り逝く
燈色の木犀無くて北国は赤、黄、緋色に燃え落ちて・・、ゆき


雨は多いが冬でもまるっきり雪の降らない紀州に生まれ育った私は、雪の降る札幌に引っ越した時はとてもうれしかった。けれど、札幌では木犀の木が見当たらなくて淋しい思いもした。

車椅子の生活になっていた母も札幌に一緒に連れていった。
淡いむらさきのハナショウブを自宅の庭に作っていた母は、入居した施設で菖蒲園に連れて行ってもらった時はとても喜んでいた。でも、その母も年とともに目が見えづらくなり、薄紫や白い花を喜ばなくなった。黄色や殊に蜜柑色の花を持って行くと喜んだ。
札幌に引っ越して10年後の春に、蜜柑のなる故里に連れ帰って来たが、母は5日後に亡くなった。