秋
秋は透明な
薄いむらさきだ
むらさきの秋は
騒がしいものを寄せつけない
体の透きとおる人をだけ
そおっと淋しくなでるのだ
むらさきの中では
淋しがりやだが
強い死なない人だけが
首をたれて
落葉をハラハラと浴びるのだ
矢沢宰『光る砂漠』より
きちんと整列をさせたり、完璧な演技をめざして何度も練習をさせたりする大きな声が響く運動会シーズンが苦手で、早く静かな秋になるようにと、この詩を心の中で繰り返し呟いていた。未熟な教員だった頃の話。