『博士の愛した数式』小川洋子=作(新潮社)については何も私が書く必要はないだろう、そう思えるほど世の中に知れ渡っている小説だと思う。だから内容についてはとても良かったとだけ書いておくことにしよう。
この博士の愛した数式がティリッヒの神学を表しているように思えて、私の心はふるえた。だから、ただそのことだけを書きたいと思う。
私がティリッヒの言葉に出会ったのは八木誠一の『キリストとイエス』(講談社現代新書)という一冊の本の中でだった。22の頃だ。数式の話だからという訳ではないが、今の私は、読んだ歳の2倍の年月もいつの間にか越えてしまっている。けれど、この歳になって神学まではいかないが、せめてティリッヒの伝記を読んでみようと思い、大島末男=著『ティリッヒ』(清水書院)を読み始めたのだった。その翌日、『博士の愛した数式』をDVDで見て、その数式が、私の中で、ティリッヒの神学へとつながっていったのだった。
私は神学を学んだわけではないから、もしかしたら間違ったことを書いてしまうかも知れない。けれど、間違うことを恐れずに書いてみたいと思う。