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すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

ニンニクと亜鉛と銅と鉄

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私が結婚して家を出た後、一人暮らしを始めてから母は多血症になった。

ウィキペディア「真性多血症」のところには、「正常な造血細胞は、…エリスロポエチン受容体がある。エリスロポエチン受容体にはエリスロポエチンが結合した時に起きるシグナルを伝達する働きを持っている酵素にJAK2キナーゼがあるが、…。しかしJAK2遺伝子変異によりこのバリンがフェニルアラニンに置き換わってしまうのがJAK2V617F変異であり、…変異したJAK2キナーゼはエリスロポエチンによるシグナルが無い状態でもエリスロポエチンが受容体に結合したかのようにシグナル伝達をしてしまい、そのため造血途中の幼若な血液細胞は盛んに分裂・増殖するようになる。やがて赤血球が過剰に増えるとエリスロポエチンを産出している腎臓はエリスロポエチンの産出を減らして造血のコントロー ルを試みるが、もはやエリスロポエチン存在と無関係にシグナル伝達を行ってしまうJAK2V617F変異キナーゼの基では造血のコントロールを受け付けない状態になってしまい、血液細胞の産出が亢進した状態が続くようになる」と記されている。

亜鉛の機能と健康』には、「慢性腎不全の貧血は傍糸球体装置における造血ホルモン・エリスロポエチン産生低下による骨髄幹細胞での赤芽球への分化障害に起因する。腎性貧血の治療としてエリスロポエチンの注射が行われるが、亜鉛の投与により注射量を減らすことができる。福島らは、腎機能(e-GFR)と貧血、血清亜鉛濃度の関連性を検討した」と記されている。

亜鉛は、エリスロポエチンの産生に関与しているのだと思う。

「放射線の影響と亜鉛とアラキドン酸とロイコトリエンB4、そして植物の奇形(アレルギーの観点から)」で、亜鉛リノール酸からアラキドン酸への変換に関わって、植物の奇形発生を抑制しているのではないかと書いたのだが、ここでも、赤血球の分化に必要な造血ホルモン・エリスロポエチンの産生に亜鉛が関わっているように思える。つまり、亜鉛が不足した状態では、エリスロポエチンが結合した時に起きるシグナルを伝達する働きを持っている酵素が遺伝子変異を起こすということではないだろうか。一過性の亜鉛不足では腎性貧血となり、慢性的に亜鉛不足が続く中では真性多血症を発症してくる、と言えないだろうか?

母は、一人暮らしを始めた後に、ニンニクの焼いたものを毎日一かけ食べていたのだった。いつの時点からだったのか、何年食べ続けていたのかは、分からない。テレビの健康番組を見て食べ始めたのかも知れない。けれど頸椎の手術をする前の頃には、もう、多血症で病院にかかって瀉血もしていたのだ。

ニンニクは、アリシンやアホエンなどのイオウ化合物を多く含んでいる。

『栄養成分バイブル』には、含硫アミノ酸(イオウを含む)のシスチンが「銅などの有毒金属…から、からだを守ります」と記されている。

亜鉛の機能と健康』では、解毒機能をもつメタロチオネインについて、「含硫アミノ酸であるシステインを多量に含む低分子のタンパク質で、システインのSH基に金属を結合してその毒性を弱める」として、「メタロチオネインは小腸、肝臓、腎臓といった防御・解毒・排泄機能を持つ臓器で発現しやすく、有害金属と亜鉛が入れ替わることによって重金属を捕捉し、尿中に排泄させる」と記されている。さらに、亜鉛の耐容上限量のところでは、「1日150mg摂取でも血清セルロプラスミン活性の低下がみられ、鎌状赤血球貧血患者では銅不足となる(亜鉛により誘導された腸管メタロチオネインが銅と結合し、腸細胞から剥離する(銅が喪失するためと考察)」(『亜鉛の機能と健康』)と記されている。

これらの記述から、イオウ化合物を多く含むニンニクの常食、大量摂取でメタロチオネインと同じ働きが起こるのではないか、と考えた。
ニンニクを食べることで亜鉛が銅の排出に使われ、エリスロポエチンの産生に働けなくなり、腎性貧血、多血症となり得る。
また、銅が排出されるために、鉄の体内循環が滞り、貧血となる。
こういったところから、母は多血症になり、私自身もニンニクを食べると具合が悪くなっていたのだろう、と。

銅不足で起こりうる病状は他にも多々ある。ノルアドレナリンなど交感神経系の伝達物質への変換のために銅は欠かせない。これが造られなくなれば、心筋の収縮が弱まり、その状態が長く続けば心肥大を引き起こす。この場合、下の血圧が高くなるのではないかと思う。
銅を含む食物を多く摂れば、上の血圧が高めに出るのではないだろうか?

夫に、ニンニクの料理を食べさせた翌朝の下の血圧が高めになるので、このことに行き着いた。血圧を下げようと思って、ニンニクを食べさせると、上の血圧は下がるのだが、下が高くなる。
β遮断剤を服用しているので、余計にそうなると思われる。(αβ遮断剤は心拍を緩徐させる。これが長く続くと、心臓からの血液の拍出が抑えられ、血液が溜まり、次第にうっ血性の心不全となると思われる。心不全の薬でありながら心不全を引き起こすのである。薬の長期服用は、そういった逆説的問題をはらんでいる。)

そしてやはり亜鉛、銅不足で問題になるのが、抗酸化に働くスーパーオキシドジスムターゼが造られないことである。また鉄不足でも、抗酸化の第二段階で働く過酸化水素が造られなくなる。放射線防護のことを考えても、これら重金属の不足は、これから大きな問題となってくるように思われる。

一つの栄養素を大量に摂ることで、他の栄養素が不足するということが起こってくると考えられる。飽食の時代の栄養失調である。特に薬効の強いものほど、摂取には注意が必要だと思う。


参考書籍:『亜鉛の機能と健康ー新たにわかった多彩な機能ー』日本栄養・食糧学会=監修(建帛社)
     『栄養成分バイブル』中村丁次=監修(主婦と生活社
     その他諸々



これは(↑)、砂子屋書房のサイトの8月17日の『一首鑑賞 日々のクオリア