グリム童話の『漁師とおかみさんの話』を初めて読んだ時、聖書(マタイ福音書10章、ルカ福音書11章等)の中に出てくる「ベルゼブル」を思い浮かべた。『漁師とおかみさんの話』に出てくるおかみさんがイルゼビルという名前だったからなのだ。「ベルゼブル」というのは悪魔のことだと理解していたのだが、『漁師とおかみさんの話』について書く時に、「ベルゼブル」の訳が「イルゼビル」に近いものがないか調べてみたのだった。けれど、口語訳、新共同訳、新改訳、文語訳やフランシスコ会訳まで見たが、いずれも「ベルゼブル」になっていた。それで、この名前について言及するのをあきらめた。
今年最初の礼拝説教の中で、「ベルゼブル」というのは「豪邸の主」という意味だと聞いて大いに膝を打った。漁師のおかみさんのイルゼビルは、漁師が助けた魚に大きな家を願うのである。城や宮殿の主でも飽き足りず、しまいに神になることを願って、家はもとの小便つぼのような小屋に戻されるという話だったからだ。
ちなみに、「イルゼビル」という訳は、吉原高志・素子訳の初版からの訳も、小澤俊夫訳の2版からの訳も、佐々梨代子・野村泫訳の7版からの訳も「イルゼビル」となっている。
色々な言語が出来ると語源も分かって面白いだろうなと思わされるのだが、あまりそういうものを求めすぎるとバベルの塔のようなことになるのだろうと思ったりもする。人間、弁えというものが大事なのだとつくづく思ったことだった。
『漁師とおかみさんの話』については、
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http://d.hatena.ne.jp/myrtus77/20130805/p1