冤罪の古き事件の映像に笑みて映れり処せられし人は
大逆の幸徳秋水覚えしに大石聞かずふるさとに生ふ
冤罪に死せる「わが町の毒取る(ドクトル)」と呼ばれし人の笑みの柔らし
「大石だになかりしならば」と云ふ母のありて傷める思郷の心
紀州グループと称された中2名が死刑、後は恩赦によって無期となる。この母は無期となった者の母。[ 参考:森長英三郎=著『祿亭大石誠之助』(岩波書店)]
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己が愛はかなきを知るドクトルのみ文つきせずつきせずやさし
一粒の麦死してのち実を結ぶ 誠之助死しゑいは生りたり
彼の人を思はする如やはらかに笑まへる人は冤罪に死す
「彼の人のやうだ」と言へば誠之助きっと困って奥つ城に笑む
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夢に見き 誠之助が番傘に微笑みてのちゆっくり消えた ・ ・ ・
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百年の時ふれどなほその傷の奥へ奥へと深まりて閉づ
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