風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

《 愛して生きる 》、そんな憧れを・・。

以下は、昔書いた子どもの本の紹介文から。

 

映画にもなりました、梨木香歩=作『西の魔女が死んだ

 

死の恐怖に勝たしめるものは《愛》なのだと思います。

 

不登校になった“まい”は祖母のもとで暮らすことになる。

英国人の祖母は田舎で自然と共に暮らしている。薬草の知識を持ち、それを生活の中に取り入れている祖母は、娘である“まい”の母から魔女と呼ばれていた。

まいは、その祖母から「魔女修行」を受けようとする。魔女になるための修行は「規則正しい生活をする」、「何でも自分で決める。決めた事をやり遂げる」、「外からの刺激に動揺しない」等だった。

そんな生活の中で、ある時まいはおばあちゃんに尋ねる。「人は死んだらどうなるの」 そのまいの問いかけにおばあちゃんが残してくれたものは・・・

 

今回紹介するのは、このお話、『西の魔女が死んだ』です。

 

「人は死んだらどうなるの」ー この問いに答える事の出来る人間は一人もいません。

その事を認めながら誠実に答えようとしてくれた祖母の愛情を知った時、まいは初めて生きる力を得る事が出来たのだと思います。まいは転校によって不登校から立ち直ります。けれど、本当にそこから立ち直っていくのは、この問いに誠実に向き合ってくれた祖母の愛情を知った時なのだと思うのです。

私達は子どもにこんな力もつけさせたい、こんな能力も持たせてやりたいと教育を受けさせます。しかし、生きる力というのはそういった教育では身に付かないのかも知れません。死の問題が解決されて初めて、生きる力というものが湧いてくるのではないでしょうか。

けれどそれは、知識として解決されるのではなく、死の問題を共有されるという愛情の体験として解決されるのだと思うのです。

 

そして、その事でまいだけが生きる力を得たのではなく、むしろ、おばあちゃんこそが愛情を注ぐということで死の恐怖を超えたのではないかと思うのです。

 

私も幼い頃から死の恐怖に苛まれて来ました。死の恐怖に勝たしめるものは何だろうと漠然と考えてきたような気がします。そしてそれは、愛なのではないかと思い始めていました。この本に出会って、私はその事を確信したような気がします。

 

この本を中学生の女の子にお勧めしたいと思っていました。けれど今は、老年期を前にした私と同じ位の年令の方にお勧めしたいと思います。

《 愛して生きる 》、そんな憧れを見い出して、宝物のような一冊になるに違いありません。

 

 

憐れみ豊かな神は、わたしたちをこの上なく愛してくださり、その愛によって、罪のために死んでいたわたしたちをキリストと共に生かし、キリスト・イエスによって共に復活させ、共に天の王座に着かせてくださいました。(エフェソの信徒への手紙2:4~6)