風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

アセチルコリンとニコチン受容体と自律神経の関係について(追記あり)


● アセチルコリンとアセチルコリン受容体 〜副交感神経を中心に〜
迷走神経(副交感神経に属する)の終端より放出されたアセチルコリンの受容体が心臓にあることがわかっています。アセチルコリンがこの受容体に結合することで、心臓の活動が抑制され、拍動が遅くなります。その一方、運動神経と骨格筋の接合部でも、アセチルコリンの放出とその受容体があることが分かっています。こちらは、アセチルコリンが受容体に結合することで、骨格筋である横紋筋(おうもんきん)が興奮し収縮することがわかっています。つまり、アセチルコリンは心臓の細胞活動を抑制し、その一方、骨格筋を興奮させています。
(中略)
運動神経末端のニコチン受容体とアセチルコリンの振る舞いは研究のすすんでいるトピックです。アセチルコリンがNM受容体に結合すると、NM受容体のナトリウムチャンネルが開き、ナトリウムイオン(Na+)が細胞内に流れ込み、脱分極を起こし、細胞内の電位がプラス側に傾きます。これを興奮性シナプス後電位(EPSP)が発生する、あるいは、終板電位が発生するともいいます。
一方、細胞膜上には細胞内の電位がある閾値を超えると、ゲートを開き細胞外からNa+を細胞内へ流し込む”電位依存型ナトリウムイオンゲート”が存在しています。EPSPの発生、つまり、脱分極が繰り返えされ、電位がこの閾値を超えるとゲートが開き、ナトリウムイオンが一気に流入しスパイク(活動電位)が発生します。
このスパイク電位(活動電位)は、細胞膜を伝わって行き、”T管”と呼ばれる細胞膜のくぼみに接して存在する”筋小胞体(きんしょうほうたい)”にまで伝わります。この筋小胞体は電位変化に反応するタンパク質を持っており、活動電位を検出すると、筋小胞内のカルシウムイオン(Ca2+)を細胞質内に放出します。このカルシウムイオンが直接のトリガーとなって筋が収縮します。
人為的にアセチルコリン(またはニコチン)を投与してNN受容体を刺激することで、交感神経と副交感神経の両方を興奮させることができます。NN受容体は、交感神経と副交感神経の両方の神経節部で、シナプスの受容体として興奮を伝達する役割をになっているためです。
(中略)
心臓の洞房結節にはムスカリン受容体のM2タイプが存在していることが確認されています。ムスカリン受容体はニコチン受容体と構造が異なり、受容体自身はイオンチャンネルを持ちません。その代り、Gタンパクと呼ばれるタンパク質と結合しており、受容体にアセチルコリンが結合すると、このGタンパクを使って細胞膜にあるカリウムチャンネル(K+)を開きます。細胞膜上のカリウムイオンチャンネルが開くとカリウムイオンが細胞内から外部に流れ出します。陽イオンが流れ出るために、細胞内の電位はよりマイナスに変位します。もともと細胞内の電位はマイナス側に偏っているので、さらにマイナスなる”過分極”の状態になります。これにより、なかなか活動電位を発生させる電位まで電位が上昇しにくくなります。このようにして、迷走神経刺激によるアセチルコリン放出は、心臓の活動を抑制し、心拍数を減少させます。

(上記は、「ストレスと自律神経の科学」サイトより抜粋引用させて頂きました。)

『目でみるからだのメカニズム』「骨格筋には、交感神経性の血管拡張神経があり、運動開始直後に血管拡張がみられ、筋血流が増大しますが、これはアセチルコリンの作用です」と書いてあってチェックしていたのに、アセチルコリンが交感神経にも関連しているということを無視して、「アセチルコリン=副交感神経」とばかり言っていた。脳は複雑なことを回避したがるのかも知れないと思う。

骨格筋にある交感神経性の血管拡張神経に関連しているのが、上にリンクさせて頂いた中にある「運動神経末端のニコチン受容体(NM受容体)」であろう。さらにこのサイトには、「人為的にアセチルコリン(またはニコチン)を投与してNN受容体を刺激することで、交感神経と副交感神経の両方を興奮させることができます」と記されている。

交感神経系の神経伝達物質では、ノルアドレナリンは主にα受容体を刺激し、アドレナリンはαβの両受容体を刺激する。α受容体を刺激すると血管は収縮し血圧は上昇する。β受容体を刺激すると血管は拡張し、心拍数は増加し、気管支は拡張し、消化管の平滑筋は弛緩し、血糖は上昇する(『目でみるからだのメカニズム』)と記されている。

アセチルコリンがNM受容体に結合すると、骨格筋における血管平滑筋に作用し、血管拡張が起こる。これは交感神経系でβ受容体が刺激された場合と同じということである。骨格筋で血管が拡張され血流が増大すると活動が活発化されるから、これは交感神経が興奮した状態ということになる。交感神経は活動する(闘う)ための神経である。
随意筋である骨格筋に、自律神経系のしかも主に副交感神経の神経伝達物質であるアセチルコリンが関わっているので解りにくく思われるが、随意筋である骨格筋と不随意筋である平滑筋がバラバラに動いているわけではなく、連合して体を動かしているのだから、切り離して考えることは出来ない。

また、上記サイトに記されているように、アセチルコリンが心臓のムスカリン受容体に結合すると、心臓の活動を抑制し心拍数を減少させる。

つまり、アセチルコリンを生成する物質とナイアシンを大量に摂ることで、交感神経と副交感神経の両方が興奮した状態が起こってくるということになる。

カリウムが細胞内から外部に流れ出すことで“過分極”の状態になり、活動電位を発生させる電位まで電位が上昇しにくくなることによって、心臓の活動を抑制し心拍数を減少させる。これは、『しっかり学べる!栄養学』で書かれていた「血中カリウム濃度が増加し、…徐脈(脈拍数が1分間60以下に減少した状態)、不整脈が起き、急激な血中カリウム濃度の増加によって心停止に至ることもある」というところに繫がると考えられる。つまり、これ(『しっかり学べる!栄養学』「腎臓疾患でカリウム排泄に支障があると血中カリウム濃度が増加し」と書かれている血中カリウム濃度の増加)は、アセチルコリンの作用である場合も考えられるということである。

過去記事「心不全と喘息とアセチルコリンとアナフィラキシーショック、おまけに蕎麦アレルギー」でも、「以前アナフィラキシーショックについて考えていた時、私はアセチルコリンカリウムが関係しているのではないかと思っていたのだが、その時は、カリウムは心筋を収縮させてショック死に至るのではないかと思っていた。けれど、上記引用を見る限り逆のように思える」と書いたのであったが・・。