風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

『心臓の力 休めない臓器はなぜ「それ」を宿したのか』柿沼由彦=著(講談社)


柿沼由彦=著『心臓の力 休めない臓器はなぜ「それ」を宿したのか』(講談社


 私たちの体においてきわめて重要な機能を持つ心臓は、決して心臓のみで自己完結しているわけではない。体内のさまざまな方面から、多大にして精密に影響を受けている。まずは、そのことを理解していただいたうえで、心臓についてのまさに常識破りともいえる新しい知見ー現在では、「NNCCS」(a non-neuronal cardiac cholinergic system)、または「NNA」(a non-neuronal acetylcholine)と呼ばれているシステムについて紹介したい。日本語でいうと「非神経性心筋コリン作働系」というよくわかない訳になってしまうので、本書ではあえて英語で表記することにする。

2015年8月20日に出版されたこの本は、「はじめに」にこのように記されている通り、心臓におけるアセチルコリンの働きについて新しく発見したことを紹介したものである。

この本を読んで、このところずっと抱えていた疑問に70%程度の答を得ることが出来た。そして、アセチルコリンの働きについて知って、夫が入院するに至った流れが解ったように思えた。が、それについては少しずつまとめていくことにして、ここでは、血圧と交感神経と筋収縮について感じていた疑問について書こうと思う。

心臓の収縮と拡張による血圧が、今、血圧として測定されていると思うが、私は、血液を心臓に戻す骨格筋の収縮が血圧にどう影響を与えているのだろうと、ずっと考えていた。血圧は上腕で測られる(手首で測る血圧計もある)が、ここで測られる血圧の値には静脈血が心臓に戻る時の血圧は反映されているのだろうか?というようなことを考えていたのである。

『心臓の力』の50頁辺りにはそのことが記されている。

 …。だが一方で、血圧には静脈血圧もある。静脈血圧とは心臓に還ってくる血液の血圧であり、通常は20mmHgを超えることはない。…。
 このように私たちの生体において血圧というときは、圧が高い動脈血圧(高圧系という)と、圧が低い静脈血圧(低圧系という)に分けられる。…、血圧制御機構が血圧をセンスする場所、つまり圧受容器も、別々に存在している。(『心臓の力』)

そしてp54~55には以下のように記されている。写真で掲載する。

ここを読むと、交感神経の血圧への関与の大きいことが解る。
ところが、この交感神経の働きがまたとても複雑である。
『目でみるからだのメカニズム』には交感神経の受容体が2種類あって、血管への作用も真逆になることが記されている。以下に写真で掲載。

また、同じ『目でみるからだのメカニズム』の51頁には、「骨格筋には、交感神経性の血管拡張神経があり、運動開始直後に血管拡張がみられ、筋血流が増大しますが、これはアセチルコリンの作用です」とも書かれている。

アロマセラピストの資格を取ろうとしている時に、この自律神経の交感神経と副交感神経の作用がすっきり理解できなくて、大学病院に勤めている内科医に質問をしたことがあるのだが、「それが、そうとも言い切れないんですよね」という返事が返ってきた。つまり、交感神経で働く神経伝達物質と副交感神経で働く神経伝達物質であるアセチルコリンの働きが明確に分かれていないということで、10年ほど前のことであるが、その頃はまだ、自律神経の働きについても解明されていなかったのではないかと思う。今もまだ、分からない点が多いように思う。

堺章=著『目でみるからだのメカニズム』(医学書院)から、自律神経についてまとめられたものを以下に写真で掲載する。この『目でみるからだのメカニズム』は2003年10月15日新訂版第5刷のものである。

『心臓の力』の53頁には、「一方で、血圧が低くなりすぎた場合は、その情報が孤束核に伝えられると交感神経への抑制が解除されて、血圧制御機構が活性化される」として、具体的な血圧制御機構の流れが示されている。
この後は、別記事で続けて書いていきたいと思う。