風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

6月の良く晴れた朝

海近きふるさとに来て海を見ず 海の気配のただ中にをり


この道は海に出る道 死者達が寝待ちつづける墓所に出る道
寝待月なかなか出でず待つうちに長き眠りにおちてゆきたり
ま夜さめて耳すませれば雨音のきこゆる気のす木の国なれば

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6月の良く晴れた朝君は海へ 空が青くて海が青くて・・・・

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精油とは植物の命なのです」と流行りのセラピー語りて吾は
紫の花のかをりよ洗へかし罪に嘆けるそのてのひらに
6月の海にゆきける君の手のすり抜けてゆくわたしの掌の間
Lavandula angustifolia(ラヴァンデュラ・アングスティフォリア)鬱に効く
                  吾は逝かせし逝かせし君を
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苦しみの最中にありたる人に言った酷き言葉よ「死んでは駄目!」
「死なないと約束して」と教科書の言葉のままを言ひし愚かさ
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ぽっかりと空いた心の空洞を埋めやらぬまま君を逝かせた

どうすれば良かったのかと巻き戻す逝ってしまった6月の海へ

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ふるさとは死に近き町 胎児となりて帰りゆく町 海の町