「分子整合精神医学」という医学の分野が提唱されてきている。
「分子整合精神医学」というのは、体内の栄養素の状態を検査し、不足している栄養素をサプリメントで摂取して身体を生化学的に整えるというもののようだ(これは私の解釈なので、正しくは、柏崎良子=著『栄養医学ガイドブック』(学習研究社)をご覧いただきたい)。
自閉症や統合失調症というと、長らく幼少期の育てられ方が云々されてきた。
けれど、本当にそれが原因だろうか? それだけが原因だろうか? 私自身、教員時代にずっと自閉症の子どもを担当していて、自閉症についてはかなり勉強したと思っていたが、この『心の病は食事で治す』(PHP新書)を読んで、新しい視点を与えられたと思った。
加えて、私自身が体内のミネラルバランスを崩して精神の安定を欠く体験をした。
家人の高血圧に合わせてカリウムの塩を料理に使い始めて二月ほどして、情緒不安定になり始めたのだ。おかしいと思って調べ、「ナトリウムが不足するとブドウ糖の腸管吸収が促進されなくなる」ということを知った。つまり私は低血糖状態に陥っていたのだ。病院の検査では、私の体内のナトリウム値は標準値内にはあるものの最低値、逆にカリウム値は最高値であった。ナトリウムとカリウムの理想比は2:1。これが逆転していたのだ。
しかし、同じように食事をしていた家人に変化はなかった。必要摂取量や影響する量が個人によって随分違うことが、これによって分かる。
このことからも、サプリメントを用いる場合は分子整合医学を提唱する病院できちんと検査をしてからでなければならないということが言えるだろう。他に薬を服用している場合は特に注意が必要となる。
この本は、そういったことを知って、食事でゆるやかに対応していくために助けになってくれると思われる。料理の献立などは書かれていないが、どういう栄養素がどういった食物に含まれているかは書かれている。
そして、サプリメントを摂らなくても、食事で多少の改善が得られるかもしれないという可能性に希望を見出させてくれるように思われる。しかし、ほんの少しの改善は大きい!