風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

愛する人の傍らで

昔からがんばり屋だったちぃちゃんはがんばらないでは生きられなかった

誰も皆自分としてより生きられずちぃちゃんは走るの速い子だった

学年で郡で一番走るのが速くてだぁれも追いつけなかった

速すぎるだから待ってて天の川のすすきの原にきっと行くから

最後まで自分らしく生ききった山中千草わたしのともだち
山中千草というのは友の本当の名前ではない。
けれどこの歌は、友の夫君が「職場復帰すると言った時、何としても止めておけばよかった」と、病気が再発した時に言っていたというのを聞いて作ったものだ。

この一連は、『短歌研究』詠草欄で永田和宏さんに五首とも採っていただいた。

河野裕子さんに次のような短歌がある。

仰向けに本を読みゐるわが横にわからない人だと言ひて眠れり『母系』
この歌は、癌摘出手術を受けられた後、再発するまでの間に詠まれたもののようだ。
ここからは、傍らにあって気を揉んでいる永田和宏さんの姿が見えてくる。

私のこの一連は、愛する人に寄り添って苦悩された永田さんだから選んで戴けたのだと思う。
私の投稿作品で掲載されるのは、ほとんどいつも一首だけだから(笑)。


永田和宏さんの短歌を以下に引用させて頂く。

最後までわたしの妻でありつづけあなた、ごはんは、とその朝も言へり
再発と聞きて二年と直感しその直感のままに逝かせし

                         『短歌研究』2011年1月号より

昼のひとりの時間がとことんさびしくて君は病みにき癌よりも深く
もうお帰りと言ふのは誰か夕翳りする水の面(も)に鳥を浮かべて
                         『短歌研究』2011年8月号より