風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

引き戸開くれば

町裏の古き小さき煎餅屋の引き戸開くれば茶の香流るる

「流るる」というのは連体形だから、普通ならこの後に体言が省略されているはずだけれど、この場合は違う。時折こんなふうに、終止形で終わるべきところを連体形で終わっている短歌を目にするのだが、どうやらそれは歌の調子を整えるためのようだ。そういうことは文法書をいくら調べても分からない。そういったところで、歌はやはり師匠について手ほどきを受けながら詠むものなんだろうという気がする。上記の短歌は私の作。試行錯誤の末、「流るる」におさまった。


今日の新聞に歌人大辻隆弘さんが「短歌は自己表現の道具ではない」と書いていた。「自己主張できる『私』など表層的なものに過ぎない」と。「歌の調べに身を任せ、外界の変化のなかに影のように『私』を添わせてゆく。そのとき、そこに自分でも気づかなかった『私の影』が現出する・・・。」

はぁ〜、難しいもんだねぇ、短歌というのは。私など、到底歌人なんかになれそうにないと思ってしまった。

短歌研究6月号の大口玲子さんの短歌がとても良かった。