てのひらに毛虫這はせて子の帰る
緑組む毛虫の繭におどろきぬ
蛾となりて放ちし後の硝子壜
娘の通っていた保育園の庭には桜の木がいっぱいあった。
ある時迎えに行くと、掌に毛虫を這わせながら「持って帰って、飼う」と言う。青虫ならばいざ知らず、「それは、どう見ても毛虫でしょ」と言っていると、保母さんが、「ここの毛虫は触っても大丈夫です」と言われる。しかたなく持って帰って壜に入れて飼うことにした。すると、すぐに黄緑色のきれいな蛹ではなく楕円形の繭を作った。繭から出てきたのは、茶色の蛾だった。
俳句を作って師匠に見せると、「山繭だったんでしょう」と言われた。ふ〜ん?
それにしても繭だけは本当に美しかった。
そんなふうに、「くふっ、かわいい!」などと言いながら毛虫を手に這わせて連れ帰った子が、大きくなって一人暮らしのベランダでのたうつ蝉に大騒ぎしたというのだから、人間って変わるものだとびっくりする。