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ナイアシンの過剰摂取で腎不全になる?

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新しく買った栄養学の本のナイアシンの項には、「過剰症としては、ナイアシンの大量投与により、消化器系の障害(消化不良、ひどい下痢、便秘)や、肝臓疾患(肝機能低下、劇症肝炎)などの例が報告されている」(川端輝江=編著『しっかり学べる!栄養学』)と記されている。
また、中村丁次=監修『栄養成分バイブル』では、「注意したいのは糖尿病の人です。ナイアシンインスリンの合成に関与し、糖尿病と関係がありますが、最近、ナイアシンの大量摂取が糖質の処理能力を妨げるという報告があるので注意を要します」、「魚、レバー、肉などは、体内でナイアシンの原料となるアミノ酸も、ナイアシンそのものも豊富です。ビタミンB1、B2、B6が不足するとナイアシンの合成能力は低下します。大量にとると副作用が出ますが、食事からとる分には心配ありません」と記されていたのだった。

夫は心不全で入院したので循環器内科の医師が主治医となったのだが、入院前の検査では肝臓も、腎臓も悪く、血糖値も高いと言われたのだった。血糖値に関して言えば、入院中に感染症にかかり急激に上がった時に3~4日薬を飲むことになったが、その後は服用するほどの値ではないようで薬は出ていない。肝臓については入院時に悪いと言われただけでその後は何も言われなかったのだが、腎臓は、「このまま行くと人工透析になりますよ」、「腎臓の値が悪いので心臓のカテーテル検査ができない」と言われ続け、最後まで良くならなかったために退院することになったのだった。

それで、「ナイアシンが関係しているだろうか?」と思い、「ナイアシン 腎不全」で検索をかけてみたところ、腎不全や肝機能に問題がある場合は医師に相談してから摂取するようにと記載されたサプリメントのサイトなどがいくつかみつかった。どういうことだろうかとしばらく考えていたのだが、エネルギー代謝について調べていて『しっかり学べる!栄養学』で引用した図を見て、B6に繫がっていくように思えた。以下に再度写真で掲載する。

糖をエネルギーに変換するにはビタミンB1が必要だと思っていたのだが、この図を見ると、解糖系の初っ端からナイアシンが関わっていることが解る。また、「アセチルコリンは酸素消費を抑える嫌気的代謝へと転換させる?ー『心臓の力』より」でも書いたようにナイアシンはアセチルCoAをつくる過程でも、脂肪酸をアセチルCoAにβ酸化する過程でも関わっており、クエン酸回路でもビタミンB1、B2、パントテン酸とともに関わっている。さらに、電子伝達系でもビタミンB2とともに関わっているのである。
柿沼由彦=著『心臓の力』(講談社には、アセチルコリンには心筋細胞に対し、十分な酸素が存在するにもかかわらず、低酸素におかれたと錯覚しているような応答を起こさせる作用があり」と書かれている。そしてこのアセチルコリンをつくる原料となるアセチルCoAの産生にナイアシンが関わっていたのだった。そこでナイアシンを多く摂った場合に、アセチルCoAがつくられ、もう一つの原料となるコリンによってアセチルコリンがつくられると、心臓は低酸素状態に置かれたと錯覚して糖によってエネルギー生産をしようとする方へと傾くというのである。

ところで、ビタミンB6はたんぱく質代謝の主役とされている。上の図を見るとビタミンB6は糖代謝には何ら関係がないかのように見える。しかし、糖質や脂質からのエネルギー源が不足すると体たんぱく質(体を構成するたんぱく質)を分解してエネルギーとして使うことになる。
以下に、糖新生たんぱく質代謝」(『しっかり学べる!栄養学』より)の図を写真で掲載する。

上の図のアミノ基転移反応のところでビタミンB6が働いている。
夫の体は、ナイアシンを摂りすぎたために糖を使ってエネルギーを生成しようとしたのだが、糖が足りていなかったために体たんぱく質を分解して糖新生させ、それをエネルギーとして使おうとしていたのではないかと思われる。

腎機能の働きはクレアチニン尿素窒素の値で示されるが、今回はこの両方ともが悪かった。以前、甲状腺の病気と高血圧で通院していた時には尿素窒素の値は基準値内だったのだが・・。以下に、この二つについて詳しく記されているサイトをリンクし、内容を抜粋引用させていただく。


● 気になる健康診断!クレアチニン高い4つの原因|食事や生活をアドバイス!
クレアチニン値は、筋肉量に比例するので、一般に女性より男性のほうが10〜20%高値になります。年齢による変動はほとんどありません。高齢者では、年齢とともに腎糸球体ろ過率が低下しますが、筋肉量が減少するため、ほぼ一定になるそうです。
(中略)
クレアチニンとは、筋肉内にあるクレアチンアミノ酸の一種)が筋肉を動かすエネルギーとして使われた後にできる老廃物のひとつです。クレアチニンは食事の影響を受けないで、常に一定量生産され、ほとんど体内に再吸収されることなく、腎臓からのみ排泄されます。
これに比べ、尿素窒素とは、体内でエネルギーとして使われたタンパク質の老廃物(タンパク質の最終代謝産物)です。食事で摂ったタンパク質量に左右されるため、腎臓が悪くなくても過剰なタンパク質摂取によって上がります。
また、カロリー不足など体のタンパク質(筋肉など)が使われた場合や、脱水、消化管出血などがあるときにも増えます。腎機能が低下すると腎臓から排出されず、血液中にたまり、尿素窒素の値は上がります。(抜粋引用)
 

ここに記されているように、尿素窒素の値が「過剰なタンパク質摂取によって上がる」とされているために、病院ではタンパク質量を減らし、その代わり、カロリー不足で「体のタンパク質(筋肉など)が使われ」ないように糖質や油脂類で補おうとする食事内容になっていた。そのためか朝食は、カップ半量の牛乳に、ドレッシングのついたサラダ、食パン2枚にマーガリンとジャムだった。毎朝食、ほぼ同じ内容だった。それでクレアチニンの値は入院時より退院時の方が下がっているのだが、尿素窒素の値は途中の変動があるにはあるが、入院時より退院時の方が悪くなっていたのである。
この入院時の夕食ではほぼ毎日、ナイアシンの多い背の青い魚が出ていた。背の青い魚には、比較的ビタミンB6も多い。

個々の体たんぱく質は、常にその一部がアミノ酸に分解され、それに見合う量のたんぱく質が新たにアミノ酸から合成されている。つまり分解と合成を繰り返して体たんぱく質が常につくり替えられることで、生命活動が維持されているのである。これは代謝回転と呼ばれ、たんぱく質代謝の重要な特徴である。(『しっかり学べる!栄養学』)
この時のたんぱく質の合成には亜鉛も関わっているのではなかったろうか?しかし、入院時からずっと飲み続けていた利尿薬は亜鉛を排出するものであった。亜鉛が足りない状態で、代謝回転」と呼ばれるたんぱく質代謝がスムーズに行われなかったのではないか、と考えている。

最初に病院に診てもらいに行った日の検査で血糖値も高かったと聞いたので、入院する日の朝食に使おうと、前日、ナイアシンの多い鶏むね肉の挽肉を買って来た。けれど、「本当にナイアシンでいいのだろうか?」と思って、朝になって慌てて鶏もも肉の挽肉を買って来てそれらを合わせて使ったのだった。すると、入院した日の午後の主治医との面談で、「腎臓の値が2日前より悪くなっている」と言われたのだった。そんなことを言われても原因を主治医も解っているようではなく、私自身も何が悪かったのか解らず、朝に食べさせた物が悪かったのだろうかと思うばかりだったのだが、ここに来て、やはり食べさせた物が悪かったと考える。
鶏もも肉にはパントテン酸が多い。最初に掲載した図にもあるように、エネルギー生成のためにナイアシンパントテン酸ビタミンB1、B2が一緒になって働いている。鶏肉にはB2も多少含まれていると思うが、B1は豚肉などに比べると少ない。それに対してむね肉にはB6が多く含まれている。糖自体も少なくB1も少なかったために解糖系でエネルギーを賄いきれず、B6を使ってたんぱく質をエネルギーに変換したのではないか、と思う。そのために、クレアチニン尿素窒素の値が悪く出たのではないかと今は考えている。

ビタミンB6が体内で作用する活性型の物質に変わる際に、ビタミンB2が必要なので、B2の欠乏は、B6の欠乏を合併しやすいのです。(吉川敏一=著『ビタミン・ミネラル早わかり』)
ビタミンB群の栄養素は一緒に働くことが多いからサプリメントなども複合体で摂る方が良いと聞く。そういったことの一端が今回解ったような気がする。

ビタミンB6は神経伝達物質の合成にも関わっている。ビタミンB6と聴覚過敏とナイアシン神経伝達物質との関係についてもいずれまとめたいと思う。
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