風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

『漁師とおかみさんの話』(グリム童話)と「わたしこそ神、あなたたちを慰めるもの」(イザヤ書51:21)

わたし、わたしこそ神、あなたたちを慰めるもの。なぜ、あなたは恐れるのか 死ぬべき人、草にも等しい人の子を。(イザヤ書51:12)

グリム童話の中に『漁師とおかみさんの話』というのがある。

貧しい漁師が浜辺でつりをしていると、ひらめがかかる。が、ひらめは自分は魔法をかけられた王子だから水にもどしてくれと言うので、漁師は逃がしてやって家に帰る。すると漁師のおかみさんは、ひらめを逃がしてやったんだから願いごとをしてこい、と言う。そこで漁師は浜辺に戻り、ひらめを呼んで小さな家を一軒願い、家に帰ると、それまでの小便つぼのような小屋は小さな家に変わっていた。けれど、しばらくすると漁師のおかみさんはその家では満足できなくなり、漁師を又ひらめのところへ遣いに行かせる。大きな石造りの御殿、王の住む城、皇帝の宮殿、法王の教会堂と建物はどんどんと大きくなって願いごとは叶えられるのだが、最後におかみさんが「神になりたい!」と言った途端、もとの小便つぼのような小屋に戻ってしまった、というお話。

このお話、本当に分かりやすいお話だなぁと感心してしまう。初めて読んだ時は、どこまで願いごとを叶えてやるつもりなの?と思いながら読み進んでいったのだが、読み終えると至極納得出来たのだった。法王までなら許されるんだな、と。

漁師がひらめに願いごとに行く度に、明るく透きとおった海は色彩を帯び、濁り始める。この海の描写も凄まじいものがあるのだが、子どもの頃に読み聞かせで聞けば恐いお話だと感じるのではないかと思ってしまう。

けれど、世の中では今、このお話以上に怖ろしい出来事が毎日のように頻発しているように思われる。

参考書籍:『子どもに語るグリムの昔話6』(こぐま社)

いかに幸いなことか 主を神とする国は。(詩編33:12)