風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

白く


● しろじろとペンキ塗られし朝をゆきこの清潔さ不安なばかり 斎藤史『うたのゆくへ』
「白」の清潔は、プラスの価値として捉えられることが多いが、怖れや不安や極限の緊張を引き起こすものでもある。(今井恵子『一首鑑賞 日々のクオリア』より抜粋引用)


ホワイトチャペルの塔の部分が白アリにやられていて、昨年撤去した。壁も所々剥がれ落ちるようになって今後どうするか検討していたが、牧師が心不全で入院するなどして、なかなか進まなかった。

壁が崩れ落ちて通行人に怪我をさせると大変だということで修繕に取りかかると、階段の道路側の塀の内部が集成材で出来ていて、それがまた白アリにやられていたのだった。そこで手すりに変えたのだが、出来上がってみると、これまでの塀よりも低い。夫の腰辺りの高さで、ふらついてよろけると身長170以上の夫などは手すりを越えて落ちそうな気がすると言う。降圧剤を飲んでいるので時折ふらつくことがある。
「失敗したな」と夫は言うが、しかし、素人の私達では、あらかじめ手すりの高さを指定して頼むことはできなかっただろう。人間のやることというのは完璧にはいかない、とつくづく思う。

塔がなくなり、オフホワイトのガルバリウム鋼板?に変わるとチャペルのようには見えない。けれど、今から考えると前の美しく見えたホワイトチャペルは、バブルの頃の遺物だったのだと思える。
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偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは白く塗った墓に似ている。外側は美しく見えるが、内側は死人の骨や、あらゆる不潔なものでいっぱいである。(マタイ福音書23:27)
このチャペルが建てられた頃は、中学生がここで礼拝をしていたのだった。
私がこちらに帰って来てからは、日曜学校の生徒が一人だけだったので、小学生も中学生もなく、このチャペルで礼拝をしていた。牧師館の立て替えでうちの荷物をここに置かせて貰ってから、外壁が落ちていることが分かったり、塔が白アリにやられていたりで、この数年このチャペルは使われていなかった。この春たった一人だった日曜学校の生徒が中学を卒業して、使う子どもがいなくなったら牧師室として使わせて貰いたいとも夫は考えていたようだが、昨年秋から3人の子どもが教会に来るようになった。ところがこの子達は、中学生、小学生、幼児の三兄弟なので、上の子がチャペルで礼拝をして道路を挟んだ会堂と行ったり来たりするようになれば、下の子の交通事故に遭う危険性が増すように思われる。日曜学校教師達が主の御心に適った賢明な判断をしてくれるように願っている。

私は、そこに教会があると思って教会に行った人間なので、建物は大事だと考えている。大きくなくても良いと思うが、キリストの教会だとはっきり分かる建物が建っていて、そこに礼拝する群がいるということが伝道の基本だと思っているくらいだ。だから・・。

あなたの子らは久しく荒れすたれたる所を興し、あなたは代々やぶれた基を立て、人はあなたを『破れを繕う者』と呼び、『市街を繕って住むべき所となす者』と呼ぶようになる。(イザヤ書58:12)
しかし、先ずは「子ら」を育てなくてはならない。そうでなければ、建物を引き継ぐ者もいなくなる。


 このところハイテック・カラーの流行で、ビルの中のオフィスも住居も、無機質な白と黒で配色する傾向がある。これは都市生活者の、過度な緊張状態を反映しているし、またストレスを増幅する悪循環を生みだしかねない。
 というのも、…。白・黒という、色相や彩度が極端に排除された色調の波長だけでは、人の感情を調整することができない。
 白や黒、あるいは赤や紫という極端な色は、瞬発的な突出したエネルギーを発生させるかもしれない。しかし、人間は緊張のエネルギーだけでは生きていけない。(末永蒼生『色彩自由自在』より)


 青色と緑色とはどう違うか。青色はたしかに鎮静的だけれども、視線が安定しないという欠点があります。つまり、われわれは青空を見ると、一点を見ていることがむずかしい。視線がさまようのです(われわれの先祖が上空から襲ってくるハヤブサを恐れていたのかもしれません。ハヤブサにやられた頭蓋骨がいっぱい出てきているそうです)。それに対して緑色は視線が憩う。
(中略)
 白の壁は、冷たく突き放すようなところがないでもないのです。ほんのりとクリーム色が混ざっているほうが無難です。
(中略)
 この会場の天井を見てください。二・五ミリ間隔のドット(点)、それから斜めのストライプですね。これはやはり高橋剛夫先生が証明されたとおり、てんかん誘発的です。神戸大学の精神科旧病棟の天井がこれでした。てんかん性の要素が混じっていると思われる患者さんが入院してベッドに仰向けになったら身もだえしているので、天井に紙を貼ったら落ち着いたという実例があります。
 こんなものでてんかんが誘発されるとしたら、つまらないことです。ほんとうの発作なら誰でも気がつきますけれども、それより弱い、足がむずむずしたりして身もだえするようなのは、なかなかてんかんとの関連に気がつかない。発作がない人でも、たとえば杉綾のレインコートで気分が悪くなることはけっこうあります。私も杉綾のレインコートがつくるモアレ模様には弱いですね。(中井久夫『こんなとき私はどうしてきたか』「どんな環境が人を苛立たせるのか」(医学書院)より)


 白と黒にこんなにこだわる理由は、インテリアの色としてむずかしいからである。インテリアの壁面は反射率六〇パーセントを超えてはいけないという原則がある。白は反射率八八パーセントに達し、本来、室内の壁面に使うことはタブーとされている。
 さらに、白のイメージは、公共施設から病院病棟の連想につながるので、“冷たい”感じを払拭しがたい。この冷たい白もあれば、しかし暖かい白もある。(野村順一=著『色の秘密』より)