風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

光嶋裕介=著『みんなの家 建築家一年生の初仕事』



帯に、施主の内田樹さんが建築家の光嶋裕介さんのことを「救国のために出現した青年」とまで書いている。「救国」とはまた凄いと思って読み始めたのだが、読むにつれて、そうかも知れないと思い始めた。


以下、本書からの引用。

 ひと昔前は1本1万円だったものが今では3000円ほどになってしまっている、と直人さんは言います。これでは木を伐採し、製材するだけでも赤字になってしまう。直人さんの同業者の多くは、廃業していったそうです。その結果、日本中で多くの山が放置され荒れていくという負の連鎖に陥ります。
 このままでいいはずがありません。直人さんのようにフロントラインでいまだに踏ん張っている人たちに、健全にお金が流れるようにしないといけない。美山でじっさいに小林さんの仕事ぶりを見て、ぼくは強くそう感じました。
 日本は国土の半分以上が山という島国です。豊かな日本の風景は、先代から伝わる自然とつき合う知恵の中から生まれ、培われたものです。直人さん曰く、吉野林業などには、世界でも希有な森の技術が結晶しているそうです。つまり一次産業に携わる方々の汗と努力の蓄積があってこそ、日本の多様な自然は守られてきました。
 それなのに、値段が安いというだけで諸外国からの輸入木材を大量に消費していたら、ますます日本の林業と森林を衰弱させてしまいます。

ー中略ー

 凱風館でいくらふんだんに杉を使うといっても、たった1軒だけですから、日本の林業にとっては「焼け石に水」だという人もいるかもしれません。それでも、国産材をたくさん使うことが最初の小さな一歩だと思います。そのような想いを、この「凱風館」がお施主さんや施工者へ、建築界全体へと伝えていき、国産材の需要が増えていくきっかけになれば、と心より願っています。
 直人さんの育てた美山町の杉は、凱風館の柱や梁、棟木として新たな人生を送っていきます。そこには小林さんの想いとともに、山の気配が深くいきづいているのです。生きた木は木材となっても人間と同じように呼吸しているのですから。
光嶋裕介=著『みんなの家 建築家一年生の初仕事』(ARTES)より抜粋引用。

「自分だけが儲かれば良い」という発想からは、このような考えは生まれてこないと思う。

金持ちになろうとする者は、誘惑、罠、無分別で有害なさまざまの欲望に陥ります。その欲望が、人を滅亡と破滅に陥れます。金銭の欲は、すべての悪の根です。金銭を追い求めるうちに信仰から迷い出て、さまざまのひどい苦しみで突き刺された者もいます。(?テモテへの手紙6:9~10)
私も常々日本を救うためには農業を守らなければいけないと考えている人間だが、30歳をわずかに過ぎたばかりでこんなふうに考えている青年がいることを知って、とても嬉しいと思ったのだった。
もし私がお金を遣うことがあれば、こんな青年達のために遣いたいものだと思う。