風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」芳賀言太郎のエッセイ第8回

「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」第8話 ヘミングウェイの縁の地へ 〜ロンセスバージェスからパンプローナまで〜
 Iroz(イロズ)の村を越えた少し先には巡礼者向けにピザを焼いている青年がいた。彼も旅を愛する人物なのだろう。世界を旅し、今は巡礼者のためにピザを焼き、次の旅に出る。そんな雰囲気を感じた。専用の釜で一枚ずつ丁寧に焼き上げたマルゲリータ。忘れがたい味だった。
 パンプローナの手前、小高い丘の上に小さな教会があった。入り口はロマネスク様式の三重アーチ。ここは運良く開いている。中に入ると巡礼者のための覚え書きがプリントされた紙が置かれていた。スペイン語、英語などいくつかの言語の中で珍しく日本語があった。スペインに入ると日本人が多くなるということだろう。表には「巡礼」(El・Camino)、裏には巡礼者の教訓が書かれていた。(以下には私(ミルトス)に印象深く思われた言葉を抜粋する)

4.巡礼者は幸いである。あなたのリュックが空っぽになり、心が静けさと生命に満たされるならば。
5.巡礼者は幸いである。一歩戻って誰かを助けることの方が、わき目をふらずにただ前進することよりも、はるかに価値あることだということを見出すならば。
6.巡礼者は幸いである。全ての予想外の驚きに対して深い感謝の気持ちを表現する言葉を持たないとき。
9.巡礼者は幸いである。真理を求めて、巡礼を、道であり、真理であり、生命である方を求める、「生命の道」にするならば。
10.巡礼者は幸いである。あなたは巡礼が終わった時に本当の巡礼が始まることを知るのだから。

 Pamplona(パンプローナ)はナバーラ州の州都。人口20万人の都会である。毎年7月6日から14日まで開催される「サン・フェルミン」と呼ばれる牛追い祭りはスペイン三大祭りの一つであり、世界的にも有名である。ヘミングウェイの『日はまた昇る』の舞台になった町である。(中略)
 この牛追い祭は古くはキリスト教伝来以前のイベリア半島の雄牛信仰に起源を持つといわれ、パンプローナの最初の司教であり町の守護聖人である聖フェルミンを記念する祭と結びつけられて今の形になったとされている。毎年、聖フェルミンの記念日である7月7日をメインの日とし、7月6日の正午から7月14日の24時(15日の0時)までの9日間開催される。参加者が首に赤いスカーフを巻くのも、斬首刑となったフェルミンの受難を思い出すためと言われている。
 本来、牛追いは、「コンシエロ」(囲いに入れること)という言葉通りに、その日の午後の闘牛で使われる牛を闘牛場まで安全に移動させるためのものなのだが、・・。(抜粋引用)

コラム「僕の愛用品」の8回目は、水筒 LAKEN(ラーケン) PL-33 クラシック1.0ℓ ¥2,200 巡礼者の象徴は杖とひょうたんである。ひょうたんは水を入れる容器として使用していた。現在のようにペットボトルなどない時代である。水を漏らさずに運ぶことすら大変なことであったに違いない。今日においても巡礼において水筒は必需品である。(中略)
 このアルミボトルが生まれた背景にはスペインの気候が大きく関係している。アフリカに近いムルシアは降水量が東京の1/5程度であり、真夏では気温が 40℃を超える非常に乾燥したところである。「水を運ぶこと」この単純な行為がこうした地域に暮らす人々にとっては命に関わる大切なこと。そういった背景をこのラーケンのアルミボトルから感じ取ることができる。(抜粋引用)


4.巡礼者は幸いである。あなたのリュックが空っぽになり、心が静けさと生命に満たされるならば。(「El Camino(エル・カミーノ) 」第8話より)

● 20世紀から21世紀、「ドブ河」の時代から、「波」の時代へ?
 ・・。瞑想というのは、意識を弛緩させることによる睡眠ではなく、脱力によって高まる集中だ。気づきというのは、そうした精神の状態でこそ起こる。
 奇しくも、森永純さんの波の写真集を見ることを、一種の瞑想体験だと感想を述べた人がいる。
 確かに、水面をじっと見るという行為は、大事な声に耳を傾けるような行為である。水面に限らず、樹木であれ、山であれ、石であれ、それをじっと見るという行為も同じであり、人を沈思に導く。今ここにはない声に耳を傾けさせる。(抜粋引用)


● 映画『無知の知』
2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故について、原発の知識を殆ど持たない映画監督が関係者に行ったインタビューを記録したドキュメンタリー。福島県に住む人々、菅直人内閣総理大臣ほか内閣関係者、原子力工学の第一人者などに会いに行き、さまざまな視点から原発放射能の問題に迫り、エネルギーの可能性と日本の未来にも触れていく。(抜粋引用)