自閉症が治った
三歳になるセツは自閉症ぎみで、親からの呼びかけにほとんど反応せず、自分の世界に閉じこもっていた。カウンセラーが週に二度訪問したが、自閉症の改善は見られなかった。このため、セツの父は、健康回復センターを訪問した。
セツの父から相談を受けたラーソン博士は、自閉症児によく効くことで知られる、ビタミンB6とマグネシウムをサプリメントとしてセツにとらせることを勧めた。その後二週間以内に、院長はセツの父から「セツが他の子どもたちと遊ぶようになった」との嬉しい知らせを電話でもらった。
(中略)
この子にとって、B6とマグネシウムは脳内でドーパミンが枯渇するのを防ぐはたらきをした。ほとんどの自閉症児の脳内でドーパミンという伝達物質の枯渇が起こっている。脳内物質のバランスが崩れて、脳のはたらきが狂い、心が病におかされることがわかる。(生田哲=著『心の病は食事で治す』)
「何々で何々が治った」というような事柄を私はそのまま受け入れることはしないのだが、けれど今回、この部分には「自閉症が治った」というタイトル以上に重要な事柄が記されていると考えたので引用することにした。
自閉症は小児分裂病と呼ばれる歴史を持っている程であるから、統合失調症と誤診されるケースが多いのではないかと思う。それは上に引用したように、どちらも神経伝達物質ドーパミンに関連しているからではないかと思うのである。
しかし又、『自閉症の才能開発』の著者であり高機能自閉症者であるテンプル・グランディンさんは「神経組織を鎮める要素である脳の中のセラトーニンの分泌を促す抗うつ剤は、しばしば自閉症者に効果がある」と記している。
生田哲さんの著書から抜粋引用したマグネシウムは、セロトニンをメラトニンに変換する際に働くミネラルではないかと思う。昼間に造られたセロトニンがメラトニンに変換されることで夜の眠りをもたらすと言われている。ビタミンB6はドーパミン合成のためにも必要であるが、セロトニン合成のためにも必要な栄養素である。
こういった栄養素の過不足が、自閉症と統合失調症、あるいは鬱との間で誤診を引き起こしやすくしているのではないかと思われる。
ある人の場合はビタミンB6の摂取が症状の改善をもたらすかも知れない。しかしまた別の人では必要な栄養素は違っているかも知れない。
溝口徹=著『「脳の栄養不足」が老化を早める!』によると、ドーパミンはフェニルアラニンから変換されるが、その過程に関わるのは鉄、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6となっている。
セロトニンはトリプトファンから変換され、その過程で同じく鉄、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6が必要となる。
そしてこのどちらもが大元に、たんぱく質とカルシウム、ビタミンC、胃酸が必要だと記されている。
しかしもっと細かいことを言えば、鉄を運搬するためには銅とたんぱく質が結合したセルロプラスミンという銅タンパク質が必要であったりもするし、ストレスがかかっている場合はトリプトファンからセロトニンへと変換されないでナイアシンに変換されるというようなことも起こる。
だからどの栄養素が足りていないのかはそれぞれ注意して摂ってみるしかないようにも思えるのである。
ただ、ビタミンB6が不足すると聴覚過敏を起こすというような記載(川端輝江=編著『しっかり学べる!栄養学』)を目にすると、自閉症の人にはB6が必要なのではないかとも思う。
自閉症の人達は聴覚に混乱を抱えている場合が多いからである(参考:『自閉症の才能開発』)。様々な音が入り乱れて入ってきた場合、感覚を遮断するという。外界との交わりを遮断したように見えるところから自閉症と名付けられたとも思える。
私がここで勧めたいのは、栄養素をサプリメントで摂ることではない。サプリメントはやはり薬に近いものと考えた方が良い。効果も上がるかも知れないが間違った時のリスクが大きい。やはり遠回りかも知れないが食べ物でゆっくり変えていくのが良いと思うのだ。美味しいと思って食べることで良いように変えられるなら、それに越したことはない。楽しんで作って喜んで食べることだ、と思う。