● ヘム代謝系関連酵素の構造生物学的研究「玄妙」といふ言葉あり細胞のうちなるうごき記せる論文(もの)に
CPRとHO-1の相互作用解析結果は,HO-1単体ではCPRと相互作用できないことを示しており,これはHO-1単体での揺らぎに関係すると考えられる.すなわち,この構造揺らぎは単純に誘導適合的な酵素と基質の認識というだけではなくて,CPRとの相互作用も制御する玄妙な機構といえる.(抜粋引用)HO-1=ヘムオキシゲナーゼー1、CPR=シトクロムP450還元酵素(註記=ミルトスによる)
シトクロムP450=特定の酸化還元酵素ファミリーに属する酵素の総称である。単にP450あるいはCYP(シップ)と呼ばれることがある。肝臓において解毒を行う酵素として知られているとともに、ステロイドホルモンの生合成、脂肪酸の代謝や植物の二次代謝など、生物の正常活動に必要な様々な反応に関与している。NADPHなどの電子供与体と酸素を用いて基質を酸化することも共通である。降圧剤を飲んでいた人がグレープフルーツジュースを飲んで亡くなったというニュースが昔流れた。
すべてのシトクロムP450は約500アミノ酸残基からなり、活性部位にヘムを持つ。保存されたシステイン残基と水分子がヘムの鉄原子にリガンドとして配位する。基質が酵素に結合すると、水がはずれ酸素が結合できるようになる。シトクロムとは以上のような構造的特徴、および反応過程で鉄が酸化・還元を受ける点で類似性があるが、シトクロムは一般に酵素でなく電子伝達タンパク質であって機能が異なる。 一酸化炭素が還元型の酵素の活性部位の鉄原子に結合すると、450ナノメートル(可視光領域)の波長を持つ電磁波に対し吸収極大を示すので、ピグメント(色素)450という意味で大村恒雄と佐藤了により1964年に命名された
シトクロムP450はアミノ酸配列の相同性に基づいて分類され、40%以上相同のものをファミリー、55%以上相同のものをサブファミリーとして分類する。
さまざまなシトクロムP450の基質は脂溶性で、蓄積すると毒になるものが多い。たとえば、ポリ塩化ビフェニル (PCB)、フェノバルビタールをはじめとする薬物、ステロイドなどである。これら基質の多くにはシトクロムP450の発現を誘導する性質もある。(略)
カルシウム拮抗剤などでグレープフルーツジュースとの併用により副作用が増強することがある。これはCYP3A4の活性が阻害され薬物の代謝が遅くなるためとされ酵素阻害と呼ばれる。逆にセイヨウオトギリはCYP3A4を誘導し薬物の代謝を速め酵素誘導と呼ばれる。このほかにもシトクロムP450が関係した薬物の相互作用がありうるので注意が必要である。その他、CYP2D6などの遺伝的多型により各種薬物の代謝速度に個人差が現れることが知られている。(ウィキペディアより抜粋引用)● グレープフルーツと薬物の相互作用について [話題の食品成分の科学情報]
薬物との相互作用を起こす成分は、以前はグレープフルーツ特有の苦味成分であるナリンギンやナリンゲニンなどのフラボノイド類と考えられていました。しかし、その後の研究から、ベルガモチンやジヒドロキシベルガモチンなどのフラノクマリン類 が相互作用に関与することが明らかにされています。(抜粋引用)
夫はカルシウム拮抗薬を飲まなくなったので、昨年、代わりにグレープフルーツジュースを飲むようにしていた時期があったのだが、あまり良いようには思えなかった。
さらにその頃、娘が中耳炎になってステロイド剤を飲んでいた。中耳炎が治るまでだからと考えていたのだが、1Lで買い置きしていたグレープフルーツジュースを娘も飲んでいたのだった。
今回シトクロムP450について調べて、それがステロイドホルモンや薬物などを代謝するという重要な働きをしており、その働きをグレープフルーツが阻害するということを知った。
娘が「鶏もも肉を食べると良くない気がする」と言ったのは、その後だったと思い起こした。グレープフルーツによってステロイド剤が代謝されないで蓄積しているところに、ステロイドホルモン産生を促すパントテン酸を含有した鶏もも肉を摂ることで、他の栄養素に影響を与えたのだろう。おそらく、亜鉛フィンガーたんぱく質がホルモン受容体で働いているようなので、パントテン酸によってステロイドホルモンが造られると、亜鉛がそちらの方で使われるため皮膚の形成に使えないのだと考えられる。
夫が貰って来たカルシウム拮抗薬の説明書には、グレープフルーツジュースとの飲み合わせについて注意が促されていたが、娘の中耳炎の薬については見ていない。しかし、グレープフルーツによって薬物の代謝が阻害されるというのであれば、全ての薬の説明にこのことは記載されるべきではないかと私には思える。
また、ペニー・スタンウェイ=著『スパイスハンドブック』には、「カルダモンは血圧を下げる働きをたすけるカルシウム ー チャンネルブロッカーと呼ばれる薬剤と似ています」と記されている。カルダモンは私のお気に入りのスパイスで、20代の頃レストランを開いたら「キッチン・カルダモン」と名付けたいと思っていたほどだったのだが、これを読んで、不用意に使えないと思った。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)も最近アロマセラピーが流行する中でハーブティー等でも飲まれるようになってきたのだが、それほど簡単に扱えるものではないように思える。
カンゾウはあらゆる食品の添加物として使われているが、『スパイスハンドブック』には以下のように記されている。
リコリス 1日に100g以上の十分なグリチルリチンを摂取すると低カリウム血症や、混乱、下痢、めまい、疲労、体液うっ滞、頭痛、異常な心臓の脈拍や速度、高血圧、吐き気、皮膚の発疹、視力に問題が出たり、弱くなったりする。…。また、これはジゴキシン(ジキタリスから得る強心配糖体)、利尿薬、エストロゲン、ステロイドやワルファリン(血液を希釈する)などの血圧の薬剤の働きを妨げる可能性もある。
30gずつ摂るだけで害を生じる。アメリカ食品医薬局は、40歳以上の人は1日50g以上摂取しないよう、2週間以上にわたる摂取はしないよう、また、妊娠中や授乳中の場合は避けるべきであると忠告している。また、手術前の2週間は血圧を不安定にするために避けるべきである。ごくわずかグリチルリチンはリコリスのチューインガムやお茶にも入っている。ある特定のリコリスのサプリメントと薬剤にはリコリスの脱グリチルリチンカンゾウが含まれている。(ペニー・スタンウェイ=著『ナチュラルヘルスケアのためのスパイスハンドブック』(東京堂出版)より抜粋引用)
一旦薬を飲んでしまうと体内の栄養バランスが崩れ、それを元に戻すのに大変な労力と時間がかかる。やはり、薬や、薬に代わる一つの食べ物、飲み物で血圧を下げようとしたり、病気を治そうとするのは間違いだろうと思う。
● NADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR)