風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」芳賀言太郎のエッセイ第20回


 時に応じて断ち落とされるパンの耳沖縄という耳の焦げ色  松村由利子
 こんなにも激しく雨の降る国に炉心を冷やす水がなかった
 口腔へ喉へ肺へと流れ込み死なせてしまった水の悲しみ
 集合写真に小さく円く穿たれた一人のような沖縄 今も
                      『耳ふたひら』(書肆侃侃房)より


  
「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」第20話 カテドラル 〜レオンにて〜
ヨーロッパのサイクルロードレースの開幕を告げる「パリ〜ニース」が始まった。…。季節の移り変わりと共に興味深いのは沿道に映し出される建築の数々で、数多の教会をはじめに古城から現代建築まで、空撮映像がそのままフランス観光案内にもなっている。印象深いのは、教会が地域毎、町毎に異なった表情を持っていることで、…、時にレースの展開そっちのけで空撮映像にかじりつくことになる。フランスであるから基本的にはロマネスクとゴシックなのだが、それがはっきりと色分けされているのが面白い。…。

 自動車道路脇の一本道をひたすら歩く。途中には村が無く、前にも後ろにも誰も人がいない状況は不安になるものだ。しかし、こういうひたすら長い距離を歩くこと以外は何も考えないで歩く日も必要である。

(中略)

 レオン。美しい街である。
レオンはカスティーリャ王国の首都として栄えた都市である。そしてこの町のシンボルは何と言ってもカテドラルである。
 カテドラルとは、しばしば「大聖堂」と訳されるが、本来は「司教座聖堂」のことである。ギリシャ語で椅子を意味するカテドラ:kathedora「椅子」が語源で、椅子のある教会、つまり司教の椅子のある教会を意味している。…。
 …。初代の主任建築家は、ブルゴスのカテドラルの建設にも関わっていたフランス生まれのエンリケ親方と言われ、着工が13世紀半ばということもあって、…。
  大聖堂を有名にしているのはステンドグラスである。特に、フランスでは戦災等によって失われてしまっている中世の時代のステンドグラスが大量に残されているのが貴重である。…。
 今では典型的な教会建築とされるゴシック建築だが、元々は「ゴート人の、ゴート風の」という意味で、つまり「野蛮人の」「洗練されていない」といった感じの悪口である。…。(抜粋引用)


コラム「僕の愛用品」の20回目は、レインジャケットColumbia(コロンビア) Kipling Jacket(キップリング・ジャケット)  \15,750
 バルセロナ。地中海沿いにあるスペイン第二の都市、歴史と文化が融合するアートの町。そして、私が世界で一番好きな都市である。…。
 このコロンビアのレインジャケットは…。バルセロナをイメージさせるカラフルで色鮮やかな色彩に私は心惹かれた。
(中略)
 このジャケットは本当に気に入っている。しかし、巡礼に持っていくレインウェアにはオススメできるものではない。正直、このレインウェアは蒸れる。まったく快適ではない。…。
(中略)
 もし、私が初めて巡礼に旅立つ人に「雨具は何にすれば良いですか?」と聞かれれば、迷わず、ゴアテックスを使用しているものにしたら良いですよ、と答えるだろう。高機能の素晴らしい製品がいくらでもある。
 ただ、もし自分が再度巡礼に行く機会が訪れたならば、不便でも、また、このジャケットを持っていくことだろう。快適であることに越したことはないが、快適な巡礼というのも逆に不自然である。…。(抜粋引用)