風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

映画『希望の国』と、いらくささんによる牛の句十五句

はてなダイアリーブログ『特別な1日』さんで紹介されていた園子温監督の映画『希望の国のDVDがデンタルされていたので借りてきた。

原発の町に大地震が起きる。町は架空の町に設定されているが、時は東日本大震災後、福島原発の事故後になっている。

自宅の庭の途中から20キロ圏外、避難区域外となった酪農家の主人公は息子夫婦に避難するように命令する。「逃げろ。逃げることは強さだ。強い人間だからこそ逃げるんだ」という主人公の言葉が印象的だ。

妻が認知症という設定になっている。その妻に、原発できたの?」「原発できたんか?」「残念だったなぁ」と繰り返し言わせることで、主人公が原子力施設の建設に反対していたことを示唆している。

盆踊りのお囃子に誘われるようにして認知症の妻が町へ彷徨い出ていくシーンでは、人一人いない中を牛や山羊が歩いている道路が映し出されていた。このシーンを見て、『続流浪の教会』の中の文章を思い浮かべた。
 ところでその際、どうしても教会で必要な印鑑や通帳を取りに、私たちは足を延ばし初めて震災後の故郷に入りました。上から下まで真っ白な防護服を着て、結構な緊張感を持って。・・。犬は道路に寝そべり道を空けず、牛たちは、まるで宇宙服に身を固めた人間の再来を、けげんそうな目でじっと見つめていました。
 そういえばこの牛たち、教会の隣は牛舎なので、何とか放射能が降っても生き延びるようにと飼い主が放したのでしょう。・・。
          ・
 桜も、人がいようがいまいが関係なく咲き誇り、動物たちも、もしかしたらこのほうが道路は自由に歩けるし、交通事故で死ぬことはないしいい、と言わんばかりに闊歩しているようにも見えました。
                         (佐藤彰=著『続流浪の教会』(いのちのことば社)より引用)


嫁と舅の電話でのこんなやり取りが胸を打つ。ー「お義父さん、お義父さんがきちんと私たちのこと考えてくれたこと、すっごく嬉しい、いい子を産むね。私たち元気だよ。幸せだよ。幸せです。」「良かったな。あっちに行ったらいい子を産めよ」「うん、ありがとうございます」
原発の誘致に反対していた人々、事故後、大事な家族を守るために腐心してきた人々、心を砕いた人々、そして今もそうしている人々が、きっと、実際に大勢いると思う。
今朝方、須磨地方で大きめの地震があった。つまり、この映画が現実になる可能性が充分あるということだ。

牛の句ーbyいらくさ

春林の煙の中に牛の角
木々の芽の牛を誘いて梢の揺
黒い牛草萌に垂る尻尾まで
幾春を待てど牛飼現れず
下萌の明るさ見に来牛飼は
牛の目の深さに菫隠れ咲く
聞かれたら牛ですと言う三回忌
春灯や fin du monde はわが闇に
骨の山となりし後も牛である
牛の骨の山に烏のやはり骨
原発を造った牛はいないよね
首飾り懸けて貰ってごらんなさい
赤牛になって眠っていてもいい
Altamira にうまく隠れて千年を
氷解く牛は何処まで水飲みに

https://twitter.com/irakusaaより


すみやかに終はらせたいと思ふ春 byミルトス