風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

桜井哲夫=詩「雪の降る夜には」

      雪の降る夜には

               桜井哲夫

   夜のカーテンを引いた庭には
   降る、降る、雪が降る
   雪の降る夜には
   焼きたてのホカホカの
   餡この入った粢(しとぎ)を抱きたい

   曲り家の囲炉裏で粢が焼けた
   焼きたての粢を抱いてわらしは寝る
   あやはあっぱを抱いて寝る
   おどはおかあを抱いて寝る
   じっちゃはばっちゃを抱いて寝る
   雪の降る夜には抱いて寝る

   頭の白くなった友にも
   神経痛がきて眠れないという友にも
   リューマチが痛むという津軽のあなたにも
   動脈の手術を受けた詩の先生にも
   焼きたての粢を抱かせたい

   抱きたい、抱きたい、焼きたての粢を抱きたい

   「桜井哲夫詩集」(土曜美術社出版販売)より

昔、津軽では、
       焼きたての餅抱いて寝るわらしかな
焼きたての餅抱いて寝るちんまりとまるまって寝る雪の降る夜

だったそうだ。