風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

ルーマー・ゴッデン『クリスマス人形のねがい』


今年の夏、ゴッデンの『ねずみ女房』(この題はちょっと読む気にならなくて、知ってはいてもこれまで読まないでいた)を読んで完璧にやられてしまったので、クリスマスシーズンに入った図書館で『クリスマス人形のねがい』が飾られているのを見た時には迷わず手にした。しかも挿絵がバーバラ・クーニーでは借りないわけがない。このタイトルもいまひとつだと思わないこともなかったのだが、原題は『The Story of Holly & Ivy』で、ホリー(ヒイラギ)という名のお人形とアイビー(ツタ)という名の女の子のお話なのだ。

おもちゃの店の前をとおりかかったとき、ホリーの赤いドレスが目にはいったのです。「きれいだこと!」ジョーンズさんのおくさんは足をとめました。
わたしたちなら、ホリーがどんなに買ってもらいたがってるか、すぐにわかったでしょうが、ジョーンズさんのおくさんにはこどもがいませんでしたし、お人形とあそんだのも、ずいぶんむかしのことだったので、ホリーの気持ちがわかりませんでした。ただ、長いあいだ感じたことのないなにかが、胸のおくでむずむずしはじめました。クリスマスを祝う気持ちです。        ・
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「どこかで小さな女の子が見つからないかしら」「おまえ、きょうはどうしちゃったんだ」ご主人がいいました。「小さな女の子なんか、どうやって手に入れられるっていうんだ。どうかしてるぞ」そういわれて、おくさんはちょっとさみしそうに、暖炉のたなにヒイラギをずらりとならべ、玄関ホールにヤドリギを飾り、ドアノッカーにヒイラギを何本もゆわえつけると、また家の仕事にもどっていきました。
          『クリスマス人形のねがい』(岩波書店)より

ゴッデンの絵本の中に描かれている女性の「愛したい」という思いは、その対象を血縁や肉親をはるかにこえて求めていく。その思いの深さに胸を打たれる。
ジョーンズ夫人の思いに動かされて、私も仕舞い込んでいたクリスマスのお飾りを久しぶりに取り出してきた。クリスマスの朝に、小さな女の子が、うちにもやってくるだろうか?



このツリーのリボンは、マリア・モンテッソーリの遊具を真似て、結んだりほどいたり出来るようになっている。