風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

芳賀言太郎のエッセイ 特別編 〜カンボジア滞在記2〜

芳賀言太郎のエッセイ 特別編 〜カンボジア滞在記2〜
 カンボジアという国は知らなくてもアンコール・ワットという名前を知っている人は多いのではないだろうか。…。
 アンコール遺跡群の観光拠点となるシェムリアップから車で約20分。密林の中から忽然と古代の遺跡が姿を表す。アンコール・ワットは約30年の歳月をかけて建設されたヒンドゥー寺院である。

(写真11枚等、略)

 膨大なアンコール遺跡群の中で一番印象に残ったのがタ・プローム(Ta Prohm)である。巨大に成長したガジュマル(榕樹)によって遺跡が飲み込まれようとしている。国民的漫画「ワンピース」の空島編ではまさにこのような描写があった。クメール王朝であるアンコール朝のジャヤーヴァルマン7世によって12世紀末に仏教寺院として建立された。後にヒンドゥー教寺院に改修されている。ガジュマルによる浸食が激しく、遺跡には、木の根や幹が食い込んでいる。発見時の状態を保持するという立場と、むしろガジュマルが遺跡を支えているのではないかという視点から、自然の力をそのままにして遺跡と共存を図ってきた。樹木を伐採せず、石の積み直しなどの修復を出来るだけ加えずに、維持されてきた。ガジュマルは今も成長を続けているので、その意味でタ・プロームも日々その姿を変えている。それは必ずしも樹木によって遺跡が破壊されているということではないだろう。木と石、自然と人工とが一体となって呼吸し成長しているということではないだろうか。この遺跡は生きているのである。

(写真4枚)

 遺跡をめぐるツアーも終わり、ホテルに帰るために車に乗り込む。そのときに子どもたちがワッと近くに寄ってきた。いろいろな雑貨が入ったカゴを手に提げて、「1ダラー!1ダラー!」とさけびながら私に詰め寄る。これが彼ら、彼女らの仕事なのだ。誰もがその日1日を生活するために必死だった。目の奥には暗いものがあるように感じ、貧困の中を生きてきた闇を内包していることは読み取れた。…。しかし、生きるという意志を秘めた瞳のきらめきを同時に感じ、希望を失ってはいないようにも感じた。いずれにしてもその目には怖いくらいの力があった。私は何も買わなかった。車が走り出すまで、子どもたちはずっと私の側を離れなかった。いつか、ここに戻ってきたときには「そのカゴの中のものを全てちょうだい」といい、自分で稼いだお金で子どもたちのおもちゃを買い、言い値の値段を払い、子どもたちにお金を落としていきたいと思った。(抜粋引用)


コラム 僕の愛用品 〜カンボジア、フィールド・ワーク編〜
第2回 靴 adidas スーパースター

 旅する靴は履き古したものがいい。旅行のために靴を新調するのも気分が上がってよいかもしれないが、…。ボロボロであっても履き慣れたものがよく、旅の最後には捨ててくることがほとんどである。…。
 このスーパースターは高校時代から履き続けてきたスニーカーである。もうボロボロで日常生活では履くことはなくなっていたのだが、捨てるに忍びず靴箱の奥に眠っていたものをこのカンボジアのフィールド・ワークのために引っ張り出してきた。
 この靴はもともとバスケットシューズである。

(中略)

 道路脇にゴミ袋が積まれている。ここがゴミ捨て場なのだろうか。…、後ろを振り向くと、一人のおじさんが拾っていった。…。捨てるにはまだ早いということだ。スーパースターはカンボジアでもやはりスーパースターだった。(抜粋引用)


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