誇り
葛西弘吉
配給の食事を待つ
子供達 老人達
数えきれない彼らの列が
熱い大地にえんえんと連なる
木の器にそそがれる
一杯のとうもろこしの汁
盲目の老人が
地面にこぼした汁を土ごと喰う
配給所の柵の周り
飢えた大人達が中をのぞいている
しかし決して柵を越えない
子と親が食べているのを見守る
大人達は誰も列に並ばず
子供と老人に
わずかな食事を受けさせている
それが
餓死寸前のアフリカの遊牧民の
最後の誇り
僕らにこの誇りがあるか?
今日もテレビニュースが
殺人事件を報じている