風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

『魔女ジェニファとわたし』と『レンゲ畑のまんなかで』




富安陽子=作『レンゲ畑のまんなかで』(あかね書房




E.L.カニグズバーグ=作『魔女ジェニファとわたし』(岩波少年文庫
『魔女ジェニファとわたし』は、娘が5年生位になったら読むように勧めようとずっと待っていた本だった。ところが、丁度ハリーポッターシリーズが流行っていた時期に何も説明しないまま手渡したせいか、ファンタジーだと思い込み魔女が出てくると期待して読んだ娘の感想はさんざんなものだった。一方、『レンゲ畑のまんなかで』は、図書館で借りてきたものを3年生の終わり頃に娘が先に読んだのだが、こちらはとても気に入って、持っていたいと言うので、その後購入した。

この2冊は、同じテーマを持っているように思う。「友達に出会う」、「本当の友達になる」というテーマを。精神科医山中康裕氏『ハリーと千尋世代の子どもたち』(朝日出版社の中で、思春期前の時期に同世代で同性の友達を持つことの大切さを語っておられるが、本当の友達同士になるまでには、様々な葛藤があるものである。
『魔女・・』の中では新しい学校に転校したエリザベスが、自分は魔女だというジェニファに出会う。そして魔女見習いをする破目に陥る。『レンゲ畑・・』では、小学校3年生の悦子が「魔女につかまって働かされている」という女の子に出会う。相手のことを知って本当の友達になるまでには、虚勢を張ったり、屈折した心情に振り回されたりと紆余曲折を経なければならない。
この2冊には、二人の女の子が出会って本当の友達になっていくまでの過程が描かれている。丁寧に描かれたその過程を読み辿っていくことは、子ども達が友達を作ろうとする時の力になってくれるように思われる。一冊の本を読み通すということ、それ自体、本当の友達関係を築くために必要な「忍耐」というものを養ってくれると思うが、その上に・・。

それにしても、同じようなテーマを扱ったものなのに、なぜ娘の評価が全く逆になったのだろうか?私の本の手渡し方がまずかったこともあるとは思うけれど、それだけでもなさそうだ。
一つには、翻訳物の読みづらさというのがあるかもしれない。カニグズバーグアメリカでは人気の作家で、この『魔女・・』ともう一つ自身の作品である『クローディアの秘密』ニューベリー賞を争ったくらいである。けれども、日本の子どもにとっては文化的な背景が掴みづらく、そのことが読みづらさにつながっていると言えるかもしれない。
もう一つは、『レンゲ畑・・』の方は、題名からも分かるように自然が身近に感じられる。読んでいても草の匂いや風を感じるような気がする。日本の子どもは、心理だけを追っていくものより情感を呼び起こす自然が描写されているものの方がその中に入って行き易いということがあるかもしれない。
いずれにしても、小学生の頃に一冊はこういった「友達と出会っていく」、「本当の友達になっていく」という過程を描いた本に出会わせてやりたいものだと思う。

風薫るレンゲ畑のまんなかを小さな魔女はおとうと連れて
草匂ふレンゲ畑のまんなかで魔女に出会って友達になる