風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

バラード聞く

春の雲吹き散らすごと車窓開け
春愁の車窓(まど)開け放ちバラード聞く

昔から春は好きになれない。幼稚園に入ったとき、保育園からの仲良しグループがすでに出来ていて、その輪の中に私は入れなかった。うきうきと浮き立つ周りから取り残されて一人ぽつんとしていた気がする。その辺に、春を好きになれない遠因があるかも知れない。

小学校の低学年頃までは、学校に行ってもほとんど一言も発しないで家に帰って来ていたように思う。3年の時の担任の先生は子ども達に作文を書かせる人で、一人一人に作文ノートを持たせていた。人と話さない代わりに私は、そのノートにせっせと作文を書いて出していた。お蔭で私のノートは4冊、5冊と増えていき、隅に穴を開けて一つに綴じられていた。だらだらとつまらない作文を読まされて先生も大変だったろうなと今になれば思うのだけれど、あの頃の私は、作文を通して先生に私のナラティヴ(語り)を聞いて貰っていたのだ、それによって支えられていたのだ、そう思う。

ショパンのバラードは憂愁の中に激しさがある。愁いの中に私をとことん浸らせながら、その愁いを吹き飛ばしてくれる力強さがある。