風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

五月のうた

   五月のうた

              竹内てるよ

五月は
不思議な月だ
そしてなつかしい季節だ
まだ成長のはじめの日に
窓にうつるアカシアの若芽をながめた日から
五月は 人生に深い謎を持つ
   
   ・
       
まずしいくらしのたそがれを
疲れてかえるつとめもどりの町に
木の芽あえのかおりなどして
泣いて歩いていた あの若き日よ

ただひとときの生涯に
こんなわかれもあると思い
こんな思いもあると知って
ひとりで沈んでいた 五月の夜

風にさやかにゆれている
けやきの青葉 もみのわかば
かくれるように静かに住めば
むさしのの五月も美しい

ああ五月
五月はすべてに新しい月だ
誰にも 思い出の一つはある月だ
そうだ 五月は
自然が人間のために書いた一つの童話だ

             『静かなる夜明け』(月曜社