風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

退院1か月後の尿酸値

退院1か月後の夫の検査結果は大方良好だった。もちろん完治は全くしていないのだが。

今回入院時より新たに加わった検査項目があった。UA(uric acid)、血中尿酸値である。

前回入院時、腎臓も良くないということで腎臓内科の先生と面談した際、過去に痛風の診断を受け薬を飲んでいたことがあると話したところ、看護師に「なんで、これ、尿酸の検査してないんだ!」と言っていたのだが、循環器内科の主治医に必要ないと言われたのか、その後もついぞ検査項目の中には入って来なかった。

けれど今回は、こちらが希望したわけでもなく、入院時から検査項目の中に入っていた。
入院時尿酸値は、7,2mg/dLで僅かに基準値を超えている。ところが退院1か月後の値は、8,0mg/dLでさらに高くなっていた。しかし腎臓のろ過量(eGFR)を見ると、血中尿酸値に反して退院後の方が良くなっているのである。
入院中、退院前の検査結果の説明の際、ろ過量が入院時より悪くなっている点について先生は「薬の影響があると思いますが、血中カリウムの値が基準値内に入っていますから」と安心させてくださったということだったが、退院後の検査では薬は変わらず飲んでいるものの腎臓のろ過量は良くなっている。


以下に、二つリンクさせて頂く。一つは昨日のブログでリンクさせて頂いた「みどりヶ丘病院リウマチ科(痛風外来)」のサイト。もう一つは、昭和57年に、同じ方達が中心となって出された論文である。


● 非解離尿酸(uric acid)と解離尿酸(urate)による高尿酸の病態 みどりヶ丘病院リウマチ科(痛風外来)
尿酸はpKa(解離指数)が5.75の弱酸である。非解離尿酸(uric acid)はpHの上昇に伴って解離尿酸(urate)に転換してゆき,pH 5.75で両者は平衡状態になる。pHがほぼ7.4±0.005に維持されている組織液中では98%の尿酸は解離していて,共存するNa+と結合して尿酸ナトリウム塩の形で存在している。尿酸ナトリウムの飽和濃度は7.0mg/dLで,この値を越えたら結晶の析出が始まり,組織への蓄積が進むと痛風発作や痛風結節などの病態が発現する。一方,非解離尿酸(uric acid) が生体内で病原性を発揮するのは腎臓以下の尿路である。pHがpKa以下の酸性尿中では尿酸結晶が容易に析出し,急性尿酸性腎症,尿酸結石,腎機能障害などの病態を惹起する。非解離尿酸と解離尿酸は,病原性を発揮する場所も病態も全く異なるので,明確に区別する必要がある。(抜粋)
注:「pHがほぼ7.4±0.005に維持されている」は、「pH7.4±0.05」の誤りであるように思うが・・?(ミルトス)

● 尿酸の溶解性と高尿酸尿症における尿pHの調節について
 尿酸や尿酸塩の病原性は,それらが析出し組織に沈着したり,結晶化して尿中で結石となったりすることによると考えられる。これらの現象は尿酸の溶解性と深い関係があり,生体中での尿酸の溶解性を良好に保って結晶化や沈着をおこさないようにすることが,高尿酸血症の治療上重要なポイントになると云える。従って「尿酸」という物質の溶解性に関する特徴を十分理解することが臨床的にも必要である。
(略)
しかしながら,臨床的にはアルカリ側で生成するmonosodium urateやa-mmonium acid urateを成分とする尿酸塩結石の存在もあり,これらの結石の成因について考えてみると,酸性尿で生ずるuric acid結石とは全く異なった溶解度曲線の存在が容易に推定される。
(略)
痛風をはじめとする高尿酸血症の治療を行なう際,血清尿酸値のコントロールばかりでなく,尿中への尿酸排泄の面にも配慮する必要がある。既に報告した様に,私共は尿酸排泄剤と共にアルカリ化剤として重曹(NaHCO3)を併用した際,mo-nosodium urate結石が発生した痛風症例を経験している.このことは,尿酸の溶解性を高めるには,尿をアルカリ性にするだけでは不十分であることを物語っている。そこで私共は,尿酸性腎障害や尿酸結石などの発生防止の意味から…(抜粋)

論文の方には、
「pH5.3では非常に安定であった溶液は,pH5.0では最も不安定な状態になっており,このわずか0.3のpHの差の間に,溶解度の急激な変化が存在することをこの実験結果は示している」、
「尿酸の過飽和溶液で最も安定であったのはpH5.3、5.5、5.8で,それよりアルカリ側のpH6.5、7.4、8.0などではむしろ不安定で,結晶が析出しやすいことを示している」、
「一般的には,早朝尿のpHが日内変動の中で最も低いと考えられるので,早朝尿のpHが5,5以下にならない様に調節している」、

と記されている。

堺章『目でみるからだのメカニズム』(医学書院)は、血液のpH7,35〜7,45を正常とし、6,8以下と7,8以上に「死」と記している。血液のpHがどんなに低くても、生きている限り6,8以下になることはないということである。とすると、血液中では、解離尿酸(urate)がNa+と結合して尿酸ナトリウム塩として存在しているということになる。これが、飽和濃度7.0mg/dLを上回るとき、結晶化してくるということだ。

ところが、上の論文で「早朝尿のpHが最も低いと考えられるので、早朝尿のpHが5,5以下にならない様に調節している」と書かれているように、尿のpHは血中より酸性に傾きやすいといえるように思う。血液のpHがアシドーシスに傾いていれば、尿のペーハーはもっと酸性側に傾くのではないだろうか?

退院後に夫に摂らせていた食品としては、やはりアルカリ食品が多かった。ワカメの酢の物やクエン酸を多く含むアルカリ食品である。そして、それらを夫も好んで食べたがったと言える。
もう一つはエネルギーが切れないように、大福やまんじゅう等のあんこのものを常備して食べさせていた。小豆にはモリブデンが多い。モリブデンプリン体を尿酸へと変換する働きをする。よって、モリブデンの多い物を摂ることで血中の尿酸値は上がるはずである。

これらのものを摂っていたことで、退院後の血中尿酸値が入院時より上昇していたと言えるように思う。しかし、やはりワカメなどのアルカリ食品でpHを上げたために腎臓での尿酸の結晶化は抑えられたのではないだろうか?そのために腎臓のろ過量は上がっていたのだと考えられる。

前回退院後に、教会員から「先生に」と言って、鳴門のワカメを頂いたのだった。それから秋から冬にかけてスダチをしぼったワカメの酢の物にはまって、作っては食べさせていた。
今回、その頃の検査データを見直してみて、11月、1月、3月と徐々に腎臓の値が良くなっていたことに気づいた。けれど春以降は、スダチもなくなってしまったので、ワカメの酢の物をあまり作らなくなっていたように思う。

このことから考えても、腎臓を守るためには、ある程度アルカリ食品を摂って、血液のpHを正常範囲に保っておく必要があるように思う。ただし、アルカリに傾きすぎて血中や組織液中で尿酸が結晶化してくるのは防がなくてはならない。そのためには、やはりプリン体食品とモリブデン食品、そしてアルカリ食品の摂り過ぎに注意する必要があると思う。

以下にプリン体について詳しく書かれたサイトをリンクしておく。
「尿酸値が高い人や痛風が怖い人のためのプリン体講座」

また、薬剤によって、尿酸が結晶化されやすくなる場合があることも頭に入れておいた方が良いだろうと思われる。


以下には上記リンク論文から、興味深いところを抜粋で引用させて頂く。今後、これらのことも考えていきたい。


「また,アルカリ側で形成される燐酸カルシウム結石等の問題や,今回の実験結果で認められた様に,pHが上昇すればmonosodium urateの溶解性は低下することを考慮すると,pH6,5以上のアルカリ化は,尿中尿酸濃度やNa+濃度によってはむしろ有害と思えるので,上限は6,5を大巾に越えない方が良いと考えている」
「尿中では尿酸特にurateは過飽和になりやすいことが知られている.これは尿酸自身の性質であると共に,尿中に存在する何らかの溶解促進物質(solubHizer)の作用によると考えられている.古くからTamm-Horsfall mucoproteinや或る種のムコ多糖類などがsolubilizerとして働らいているのではないかと推定されているが詳細は不明である」
「尿酸の溶解性と高尿酸尿症における尿pHの調節について」より抜粋引用)