風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

光溢るれ陰府(よみ)とは何処

聖書の中の植物と香油2ナルド

エスがベタニヤで、重い皮膚病の人シモンの家にいて、食卓についておられたとき、ひとりの女が、非常に高価で純粋なナルドの香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、それをこわし、香油をイエスの頭に注ぎかけた。(マルコ福音書14:3)

福音書に出てくるナルドの香油のナルドは、オミナエシ科の植物のようで、アロマセラピーではスパイクナード(Nardostachys jatamansi)と呼ばれている。パトリシア・デービス=著『アロマテラピー事典』には、バレリアンの近縁植物ですが、その根はきわめて珍しいかたちをしています。1本の根から2種類の根茎がでていて、そのうちの1種類は地下の花茎すなわち地下茎で、ここから精油の大部分がとられます」と記されている。
また、廣部千恵子=著『新聖書植物図鑑』には、「どの部分にも芳香のある精油を含むが、根と茎の基が特に香りが強く、それを絞って油にとかしたものをアラバスターの壺に入れて取り引きされた。ナルドを使う時にはアラバスターの壺を割らなければならなかった」「インドやヒマラヤの植物から得られるものなので、イスラエルでは、新約聖書時代にはナルドはほかの品とともにインドなどから輸入され、大変高価なものであった」と書かれている。

女の行為を人々が詰ると、イエス様は女を擁護して、「わたしによい事をしてくれた」(14:6)「この女はできる限りの事をしたのだ。すなわち、わたしのからだに油を注いで、あらかじめ葬りの用意をしてくれたのである。(14:8)と言われる。

ナルドの効能についての科学的分析はこれから研究が進められていくのではないかと思われるが、根から蒸留される精油の作用に共通する特徴として「大地に足をつけさせる」、「深く包み込んで精神を安定させる」というようなことが言われる。こういった作用と、「葬りのため」というイエスの言葉からパトリシア・デービスは次のように書いている。「マグダラ(注:ここの記事のマリヤはマグダラのマリヤではないと思うが)のマリヤが最後の晩餐の夜、イエスに塗油するのにスパイクナード油を用いたことはまた、ターミナルケアをしている治療家にとっても重い意味をもっていることを示唆しています。イエスは、自らの死が近づいていることを知っていました。…。スパイクナード油でイエスの足に油を塗ったマリヤの行為は、その瞬間に備えての一種の象徴的なものでした。ホスピスでしごとを行っている芳香療法家たちは、この世での生の終末に近づきつつある人びとを助ける精油の一つに、このスパイクナードを加えたいと望むことでしょう。」(『アロマテラピー事典』)

しかし私達は、香りに支えられて死へと赴くのではない。私達は、陰府にまで降り賜うた私達の主イエス・キリストに伴われて死を超えるのだ。その意味で、死に際して私達をキリストへと結びつける務めは、牧師の務めの中でも最も重要な務めだと言えるように思う。