風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」芳賀言太郎のエッセイ第9回

「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」第9話 ヘミングウェイの縁の地へ 〜牛追いの街から王妃の橋の架かる村〜
 中越地震から10年が経ったその1ヶ月後、長野県の白馬村を中心に震度6強地震が襲った。山古志村など10年前に被災した地域が徐々に復興してきた今、また新たな被災地が生まれてしまうのは地震大国日本の宿命なのだろうか。
 スペインの建築は地震に対しての構造計算をまったくしていない。私が一番驚いたのはバルセロナの高速道路の薄さである。横の応力については風の力のみの計算であるためほとんど0といってよい。日本ではこんなことはありえない。スペインの隣のポルトガルではかつてリスボンで大きな地震が起こったことがある。アストルガの大聖堂はこの地震で半壊し、修復前と後で石の色が異なり地震の爪痕を感じることができる。スペインにおいて地震が起こらないことを祈るばかりである。
(中略)
 巡礼路を歩き始める。巡礼路沿いにあるナバーラ大学に立ち寄りスペインのキャンパスライフをほんのすこしだけ体感する。・・。
 スペインの大学事情は日本とは大きく異なる。・・。
 スペイン人は地元を愛し、昔からの友人たちとの付き合いを大切にする。ラテンの人たちのコミュニティーはとても強い。日本人サッカー選手がスペインの リーガ・エスパニョーラでなかなか活躍できないのはこうしたラテン特有のコミュニティーに馴染むのが難しいということがあるようだ。・・。
(中略)
 巡礼路から少し離れEunate(エウナテ)の聖墳墓教会へ。・・。
 もっとも、巡礼の途中で死ぬことは必ずしも巡礼の失敗ではなかった。巡礼の途中で死んだ者はそのまま天国に行けると考えられていたからである。病気や怪我、飢えや渇き、盗賊や野獣、強欲な宿屋の主人や悪辣な渡し守によって生きて故郷に帰ることのできなかった巡礼者がどれほど多くても、巡礼への熱は冷めなかった。むしろ、そうした苦難に耐えることが天国へ行くための善行を積むことと考えられた。そして、そのような巡礼者を助けることもまた善行を積むことであった。巡礼路沿いに多くの教会、修道院、宿泊所、救護所、そして墓所が建てられ、道に石畳が敷かれ川に橋が架けられたのもそのためであった。
(中略)
 エウナテは教会を囲む繊細な二本の柱を持つ独立した立派な柱廊を有している。これは、巡礼者たちの埋葬地でもあったことと関係しているためだと言われて いる。現代のガイドブックにも「田園の中、簡素な美をもって孤高の中に立っているこの教会は私たちの霊的な源泉と、故郷へ立ち帰る私たち自身の旅路への力 強い想起を呼び覚ます」と記載されるように、巡礼路の教会の中でも独特の宗教性を内包する建築である。
 内部は闇。明るさはほとんどない。天井に穿たれた小さな開口からわずかな光が空間をぼうっと照らし出す。がらんどうの死者の空間。それは、イエス・キリストが復活したことによって「空虚な墓」となったエルサレムの聖墳墓をかたどることを通して、ここに埋葬された全ての巡礼者たちが甦り、この聖墳墓もまた 「空虚な墓」となる復活の日を指し示しているとも言えるのではないだろうか。
(中略)
 12世紀の「サンチャゴ巡礼案内書」には、次のような叙述がある。
「こういうことが幾度もあった。渡し守が渡し賃を受け取ったあと、巡礼たちを多数乗せ過ぎ、船が転覆して巡礼たちは溺れ死んだ。そこで船頭たちは死者たちの残した荷物を取ってほくそ笑んだ……」(柳宗玄訳「サンティヤーゴ巡礼案内書」『サンティヤーゴの巡礼路』(柳宗玄著作集6)八坂書房、2005年)
 当時、橋は少なく川を渡ることは非常に危険が伴った。10世紀以後とくに数を増した巡礼者のために巡礼路沿いに教会や修道院を建築してきたナバーラ王サンチョ3世の遺志を継いだ妃、ドニャ・マヨールによってこの橋は建設されることになる。(抜粋引用)

引用を最小限にしたいと思いましたが長くなってしまいました。とても読み応えのある内容です。「王妃の橋」の写真など、写真も多数掲載されています。どうぞ、リンク先に行って直接ご覧ください。(ミルトス)
コラム「僕の愛用品」の9回目は、ナイフ ヴィクトリノックス(Victorinox) トラベラーT2 BL \4,800 このトラベラーは名前の通り旅行者のために必要な機能が一本のナイフに備わっている。
(中略)
 ブレードでフランスパンを切り、カン切りでツナ缶を開け、ピンセットでトゲを抜き、ハサミでほつれた糸を切るなど、多くの場面で活躍した。もちろんもっと多くの機能を持ったタイプもあるが、これ以上の機能は巡礼では必要ない。日常生活においても利用価値は高く、ちょっとした作業はもちろん、災害時のいざというときにも役に立つ現代人の必須ツールである。・・。
 ただ、・・。(抜粋引用)


● 特定秘密保護法施行直前緊急集会「抵抗の時代を迎えて私たちはどう生きるのか」
 本日(12/9)、表題の会が御茶ノ水で開催されました。先立って、特定秘密保護法に反対する牧師の会の記者会見があり、そのあと田中伸尚氏による「抵抗の時代を迎えて・・・」という講演がありました。
1.牧師の会記者会見で、筆者の印象に残ったコメント
●基調:「特定秘密保護法」が可決・施行されたから、それでおわりではない。これを廃止する立法をすればよいのである。あきらめず、粘り強く、廃止を求めてゆきたい。
●「なぜ牧師の会か?」という問いに対して、牧師というのは日本社会ではマイノリティな存在である。そのマイノリティが声を挙げることができるということを示すことによって、呼び水になれたらと考える。」A牧師(抜粋引用)