風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

シュタイナーの四つの気質

〜昔書いた本の紹介文から〜
続けて、中学2年の娘に読むことを勧めた本を紹介しましょう。
学校で、いじめの問題で話し合いがなされた時、娘は「大勢の生徒の中には、先生方にも性格が合わないと思える生徒もいると思いますが、そういう場合はどう接しているのですか?」と尋ねたそうです。ところが、一人の生徒がそれに対して意見を述べただけで、先生からの返事はないままに次へ進んでしまったというのです。この話を聞いて私は、シュタイナー教育の本の中の“四つの気質”について書いてあるところを読むように勧めたのでした。

“四つの気質”というのは、紀元前5世紀頃のギリシャの医聖ヒポクラテスが提唱した四体液説に基づくものだそうで、粘液質、憂鬱質、多血質、胆汁質に分類されます。これを、ルドルフ・シュタイナーは教育の中で用いたのです。シュタイナー教育の教師養成課程では、気質を見分ける能力を養うことは非常に重要な課題とされているようです。教師自身の気質が子どもに与える影響は大きく、気質ごとに対応の仕方も違ってくるため、教師になる者は先ず自分の気質について分かっていなければならないというのです。

ところで、シュタイナーという人は日本ではシュタイナー教育で知られているように思いますが、ヨーロッパではオカルティスト(科学的に解明できない神秘的超自然的な現象を追究する人)とされていて、このためアカデミズムからは排除され続けてきたようです。逆に、無意識を発見したフロイト精神分析を客観的科学とするために、オカルトだけでなく宗教までも徹底的に排除しようとした人のようです。にもかかわらず、当時のドイツ精神医学には受け入れられなかったようですが・・。けれど今では、このフロイトの言ったエス(本能的な欲求を満たそうとする心の動き)や自我が脳のどの部分で働いているのか、脳科学の発達によって解明されてきていると言われているようです。
科学というのは日々変化していくものではないでしょうか。今、科学的に証明されていない事柄もいつか証明される時が来るかもしれません。又、一方で、どんなに科学が進んでも証明され得ないものもあるのではないかと私は思います。科学で証明されないから信じないという考え方にはどこかに間違いが潜んでいるような気がします。

さて、そういったシュタイナーの背景を知った上で、私は娘に“四つの気質”について読むことを勧めました。自分や友達を客観的に見つめるための一つの拠り所として役立つと思ったからです。これらの本を読んだ娘は「今の自分は粘液質だけど、3年生から6年生までの自分は、自分とは合わない(と思っていた)憂鬱質だったことが分かった」と言いました。
これらの本には、四つの気質に優劣はないということ、一人の人間の中にいくつかの気質が混じり合っている場合があるということ、環境の変化や周りの人間からの影響で気質は変わるというようなことが書かれています。

これらの本を勧めてから、私は娘に一つの注意を与えました。それは、友達に「あなたは○○質だ」等と言ってはいけないということでした。自分のことを分かったように言われるのは良い気がしないものです。これらの本を読むように勧めたのは、自分とは合わないと思われる人のことをも理解して、友達としての関係を築いていけるようにと願ったからなのです。

高橋巌=著『シュタイナー教育の方法』(角川書店
カロリーネ・フォン・ハイデブラント=著『子どもの体と心の成長』(イザラ書房)