風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

梨木香歩作品『村田エフェンディ滞土録』と、小沢一郎氏


1本化について それは,脱原発という,原発の今後のあり方についての考え方。これは,事故を起こした,或いは,起きた国の,日本ということで尚更ですけれども,ちょっと大袈裟に言うと,この原発を継続するかどうかということは,人類史的な問題だと,私は思っております。

 どんどん,どんどん新興国原発をつくる,つくるって,皆な,或いは安倍内閣は原子炉の売り込みまで一生懸命やってるわけですが,これ,世界中,どんどん,どんどん原発できちゃったら,どうすんですか。
 何かあったら,皆な,地球全部汚染しちゃいますよ。ですからその意味では,非常に大きなテーマなんですね。

脱原発は)非常に大きな,日本の将来にとって,また世界の将来にとって,大きな課題ですから。

 私は,福島の事故が本当に解決されないと,日本の将来は,覚束ないと思いますよ。

 原発は,これ,酷くなっちゃったら,どうしようもないでしょ。経済政策もヘチマもないじゃない。 
 ですから,それを更に上回る大きな問題として,できるだけ早く,この原発事故は,そして原発のあり方についての結論は出すべきだと,私は思っております。(小沢一郎氏の記者会見より抜粋引用)

「マーサ、あんた、この辺に桜が咲いているのを最近見たことがあるかい」
「桜なら、ハイ・ストリートの脇に何本かありますけど・・・。もちろん、とっくにみんな散ってしまってますよ」
「ああ、あんな、ベタって張り付いたみたいな花じゃなくて・・・。日本の桜だよ。繊細な霞のような・・・。あんた、一度日本へ行かなくっちゃ。やっぱり」
 マーサは肩をすくめた。
「よっぽど、心に残ってるんですね。五十年以上たってもまだ憶えてるなんて。けどなんでまた急にそんなことを」
「今朝、花びらが・・・。どこからか・・・」
 そのとき、ふいに涙が出そうになって、レイチェルは驚き慌てた。急に思いだしたのだ。満開の桜。花吹雪。父母、妹。異国の友人たち。尊敬していた、水島先生。
「あなたは多感な少女の頃を日本で過ごしたんですよね」
 マーサが優しくいった。
                                  (梨木香歩=作『裏庭』(新潮文庫)より)

梨木氏には、人と人、国と国がつながることへの願いを込めた作品が多くあるように思う。


そうだ
共感してもらいたい
つながっていたい
分かり合いたい
うちとけたい
納得したい
私たちは
本当は
みな
                         (梨木香歩=著『春になったら莓を摘みに』(新潮文庫)より)

人と人、国と国をつなぐと言えば思い浮かべる政治家がいる。小沢一郎氏である。
私は政治家にはほとんど興味がなく特定の政治家に肩入れすることは今までなかったし今後もないと思うが、数年前、雑誌で目にした小沢氏の取り組みには注目して、今でも記憶に留めている。雑誌の名も忘れてしまったが、その雑誌で紹介されていたのは、小沢氏がアメリカの子ども達を日本に招待し日本の子ども達との交流の場を設けているという内容だった。教育者がこういったことをしているというならあまり注目もしなかったと思う。政治家でこういった取り組みをしている方が他にいるかどうか私は知らないが、これが政治家の取り組みであるというところに、小沢一郎という政治家の国や世の中を思う想いが現れていると思ったのである。
上にリンクした記者会見の中でも原発を継続するかどうかということは人類史的な問題だ」と語っている部分があるが、日本の将来を思うということは日本のことだけを思うことに留まってはおれないということではないだろうか。日本の子ども達が将来にわたって幸せに生きられるということが、同時に他国の子ども達も幸せに生きられるということに繋がらなくてはその取り組みは本物ではないだろう。他国の不幸の上に成り立つ繁栄や幸福は偽物であり長続きするはずがないのである。


2013年3月に出版された梨木香歩氏の土地に纏わる随筆集には、紀伊大島にある樫野崎が取り上げられている。

 だがそのとき樫野崎へ行った目的は、水仙ではなかった。一八九〇年、トルコの軍艦エルトゥールル号が嵐の中、樫野崎近くで座礁、船長以下五八七名が死亡するという悲惨な事故があった。当時樫野崎近くの漁村に住む住民たちは献身的に救助、介護に当たった。そのときのことを未だにトルコ国民は恩義に感じてくれ、それが一九八五年のイラン・イラク戦争時、イラン在住の日本人の救出を、トルコが買って出てくれた伏線になっている。その出来事のもととなった、樫野崎の海を見たいと思ったのだった。一八九〇年ー水仙はそのときすでに、この土地に根を張っていたことになる。(梨木香歩=著『鳥と雲と薬草袋』(新潮社)より)
ここには、トルコと日本、そして樫野崎に灯台を建てるために技師をおくった英国とのつながりが記されている。

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梨木氏は、『村田エフェンディ滞土録』(角川文庫)で、このエルトゥールル号の遭難を物語の中に織り込んで紹介しているが、『鳥と雲と薬草袋』では自身の作品である『村田エフェンディ滞土録』については触れていない。この辺りが梨木氏のゆかしい人柄を思わせるところであるが・・。

 そもそも何故そういう研究員受け入れの申し出が土耳古国からなされたかというと、事は九年前起こった惨事に端を発する。
 土耳古皇帝から日本国天皇への親書を託した使者を乗せたフリゲート艦、エルトゥールル号が帰国途中、和歌山沖で台風に遭い、乗員六五〇名中五八七名が溺死した。そのとき地元の警察隊を始め、漁民まで実に献身的な救助及び看護にあたり、土耳古帝国皇帝がいたく感激、両国の友好のますます深まらんことを願って、日本の学者を一名、土耳古文化研究のため彼の地に招聘することにしたのである。(梨木香歩=作『村田エフェンディ滞土録』(角川書店)より)

しかし昨年、日本政府はこの土耳古原発を売り込んだのである。


トルコへ原発輸出、三菱重に影落とす巨額賠償問題

知性を明るくするもの「これらの事実を直視するならば、原発再稼働の是非を議論すること自体、ばかげている。「是」などありえない。まして、「日本の原発は世界一安全です」などと言って地震国トルコをはじめとする国々にセールスして回るなど人の道に反する。輸出先の原発から出た廃棄物は日本が引き受けることになっているという」(抜粋引用)
 

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http://d.hatena.ne.jp/myrtus77/20120823/p1