風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

幼子イエスに献げられた没薬と乳香

エスヘロデ王の代に、ユダヤベツレヘムでお生れになったとき、見よ、東からきた博士たちがエルサレムに着いて言った、「ユダヤ人の王としてお生れになったかたは、どこにおられますか。わたしたちは東の方でその星を見たので、そのかたを拝みにきました」。
彼らはその星を見て、非常な喜びにあふれた。そして、家にはいって、母マリヤのそばにいる幼な子に会い、ひれ伏して拝み、また、宝の箱をあけて、黄金・乳香・没薬などの贈り物をささげた。(マタイによる福音書2:1~2、10~11)

今宵はイエス・キリストがお生まれになったクリスマスの夜ということなので、アロマセラピーの観点を交えて、東方の博士達が幼子イエスに献げたという没薬と乳香について書いてみよう。

没薬精油も乳香精油もカンラン科の低木が産出する樹脂を蒸溜して抽出する。

没薬の学名はCommiphora myrrhaで、「Commiphora=樹脂を産生する」「myrrha=苦い」の意。
エジプトでは太陽崇拝の儀式で用いられたり、特上のミイラづくりに用いられたということで、ミイラという名はこの「没薬(ミルラ)」からきているようだ。組織の変質を食いとめ浸出性の創傷や湿疹に効果が発揮されるという。又、アロマテラピーのための84の精油には次のように書かれている。
旧約聖書エステル記には、女たちの斎戒のためにこれが用いられていたこと、またヨセフが兄弟たちにイシマエルの隊商に売られたとき、隊商のラクダがガム、香油、没薬をエジプトの地に運んでいたことが書かれています。・・。没薬はまた、生まれたばかりの幼な子イエスへの献げものでした。(マタイ伝2:11)。また、十字架につけられたイエスにもこれをワインにまぜたものが手渡されました。(マルコ伝15:23)。
没薬の香りの私のイメージは、「水害の後の湿気た畳のような匂い」、だ。これは私の子どもの頃の体験が色濃く出ているイメージだが、要するにちょっとカビ臭い気がするのだ。だからと言って、私は没薬の香りが嫌いなわけではない。むしろ懐かしくて好きかも?と思うから、香りというのは不思議なものだ。

乳香の学名はBoswellia carteriiで、「Boswellia=香りを放つ重要な種類の木」「carterii=ミイラ研究者であるカーター博士に因む」の意。
このカーター博士がエジプトでミイラの埋葬所を開けたところ乳香が発見されたということなので、乳香もやはりミイラづくりに用いられていたことが分かる。アロマテラピー事典』にはエジプト人はまた、これを遺体の防腐保存にも使いました」と書かれている。
『プロフェッショナルのためのアロマテラピーの中の乳香の特性の項を見ると「抗老化作用」と書かれている。アンチエイジングで顔のしわをのばすために、近年ますますフェイシャルクリームなどにも用いられるようになってきたようだ。
しわというのは、皮膚の真皮層の断裂によって出来る。真皮層の下部である網状層を構成するコラーゲンやエラスチンなどの線維たん白質が断裂した状態がしわであるから、乳香がしわを修復するというのであれば、同じような線維たん白質で成り立っている筋肉の修復にも効果を発揮するのではないかと私は思うのだが、どうだろうか。
又、乳香は喘息や気管支炎など呼吸器への働きかけにも優れており、神経性の抑鬱状態から生じる浅く速い呼吸を深くゆっくりしたものにするとも言われていて、この香りが好きだと言う人は多いのではないかと思う。が、私には可もなく不可もなくの香りで、喘息発作の時などに一番に使おうと頭に浮かぶ精油ではない。香りというのは本当に不思議なもので、その香りが好きだと思う場合は、その時その人にとってその香りが必要な時なのである。


それにしても、ミイラ作りや老化防止のために有益だった香油が生まれたばかりの幼子イエスに献げられたというのだから・・、ここでやはり私は葛原妙子の最終歌集『をがたま』の中の二首を思い浮かべずにはおれない。

生誕ののち数時間イエズスはもつとも小さな箱にいましぬ   葛原妙子『をがたま』
かすかなる灰色を帯び雷鳴のなかなるキリスト先づ老いたまふ

クリスマスの夜に、神であるイエス・キリスト老いる人となってこの世に来てくださったのである。

「見よ、おとめが身ごもって男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる。」
この名は、「神は我々と共におられる」という意味である。(マタイによる福音書1:23)


参考書籍:『アロマテラピーのための84の精油』ワンダー・セラー著(フレグランスジャーナル社)
     『アロマテラピー事典』  パトリシア・デービス著   (     〃      )
     『プロフェッショナルのためのアロマテラピー
              シャーリー・プライス/レン・プライス著(     〃      )
     『エッセンシャルオイル&ハーブウォーター375』ジニー・ローズ著(BABジャパン)

ところで、「マイ自由ノート」kaoriboccoさんに教えていただいた没薬と乳香とサンダルウッドのブレンドでクリームを作ってみた。
ミツロウをスイートアーモンド油に溶かして没薬1乳香2サンダルウッド1を入れて作った。私はサンダルウッドの香りが苦手で鼻先で匂うと頭がクラクラして気分が悪くなるので、もしかしたら踵クリームになるかも知れないと思いながら作ったのだが、乳香を2滴にしたせいか乳香ばかりが主張してブレンドとしての香りが分からない。しかも!容器の底の方で溶けきらないで没薬が固まっているのが見える。失敗!

しわ取り用にフェイスクリームを作る時はミツロウでなくシアバターを使用する方が良いと思う。
アバターとしわ取りフェイスクリームについては以下から、
     ↓
http://plaza.rakuten.co.jp/narrative1gatari/diary/201105260000/