風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

アスペルガー症候群とうつ病と統合失調症

 ・・。一般に記憶とは決して厳密なものではなく、かなり曖昧でいい加減なものであるといえます。ファジー記憶とよんでもよいかもしれません。じつは、これが脳の記憶の「本質」なのです。
 この曖昧さは、生命にとってきわめて重要な意味をもっています。なぜなら、生活している環境は日々刻々と変化しているからです。たとえば、初対面の人に会ったとき、その人はきれいな髪に水玉のリボンをつけて紺のワンピースを着ていたとします。しかし、つぎに会ったときには同じリボンとワンピースを身につけている保証はありません。もしかしたらパーマさえかけているかもしれません。もし、これらすべてのものを厳密に記憶したとしたら、再会したときにその人は別人として認識されてしまいます。これでは困ります。ですから、記憶は厳密さよりも、むしろ、曖昧さや柔軟性が必要とされるのです。
 文字でも同じことがいえます。人によって筆跡が異なるにもかかわらず、同一文字であると認識できます。・・。
 変容する環境の中で、生物が生きながらえるためには、過去の「記憶」を頼りに、さまざまな判断をくだしながら生活する必要があります。しかし、変化する環境の中で、まったく同じ状況は二度と来ないのがふつうです。ですから、記憶は、ほどよく柔軟であることがどうしても必要なのです。

池谷裕二=著『記憶力を強くする』(講談社ブルーバックス)より

この部分を読んだ時、自閉症の範疇に含まれる自閉症スペクトラムの人達のことを思い浮かべた。
自閉症の人々の記憶にはこの曖昧さがなく、見た物がそのまま厳密に記憶される。他方、学習障害(LD)の場合は記憶が曖昧でなかなか定着しないという困難を抱えている。この『記憶力を強くする』は、自閉症学習障害について書かれた本では全くないのだが、ここを読んで、記憶のメカニズムからその両方の持つ困難さが理解できたように思った。

厳密な記憶から曖昧な記憶までを記憶のあり方の連続体として捉えると、一人一人の記憶のあり方はその間のどこかに位置すると言えるだろう。私の場合は、ほぼ学習障害に近いほど曖昧な記憶である。私の頭は要約は得意だけれど、そのままをきっちり記憶するのは得意でない。


ここで取り上げようとしているのは、自閉症スペクトラム、つまり自閉症の範疇に入る人達のことである。特に、知能は通常かそれより高く周りからは自閉症とは思われない人達のこと、アスペルガー症候群と呼ばれる人達のことなのだ。
アスペルガー自閉症状の軽度の人達は自閉症だと診断されることがなく、その代わりに思春期や成人後に統合失調症の診断を受ける場合が多くあるようだ。けれどどちらかというと、「『うつ病アスペルガー症候群にほとんど合併する』といわれるくらいに多い病気」でありアスペルガー症候群の人たちに使われる薬としても抗うつ薬がもっとも一般的」(加藤進昌=著『大人のアスペルガー症候群』(講談社+α文庫))のようである。

統合失調症うつ病では薬の働きは正反対になるのではないだろうか?それで誤診されたのでは堪らないと私には思える・・。


英歌手スーザン・ボイルさん、アスペルガー症候群を告白
ボイルさんは同紙のインタビューで、・・自身の症状はもっと深刻ではないかとの疑問があり、スコットランドの専門医を受診したと告白。アスペルガー症候群と診断されたことで、「何が問題なのかをはっきり理解できたのでホッとして、少し気が楽になった」と打ち明けた。
診断の事実を公表したのは、自分のことを理解して接してもらうためと説明し、「・・周りに支えてくれる人たちがいれば大丈夫」と語った。