風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

グリム童話『しらみとのみ』

私の娘は、生まれてからこのかた大病というものをしたことがないが、生まれてすぐからアトピー性皮膚炎だった。寝返りを始める5ヶ月位までの間は、昼間、クーハンの中に寝かせていたが、そのクーハンの縁であんよを擦って小さいながら痒いところを引っ掻いていた姿が今でも目に浮かぶ。朝、目を覚まし、揺り籠の中で摑まり立ちして「おはよう」と言いたげにニコニコ笑いかけている娘に、「おはよう」も言わず、夜中に引っ掻いて血まみれになってやしないかと、おでこやほっぺを恐る恐る見ていた私だった。
その娘が、子どもの頃、風邪などをひいて苦しい思いをすると言っていた言葉がある。「アダムのせいだ。アダムが、食べちゃいけない木の実を食べたせいだ」

『しらみとのみ』というお話が、グリム童話の中にある。

 しらみとのみが、いっしょに所帯をもって、くらしていました。
 あるとき、ふたりは卵のからのなかで、ビールをつくりました。すると、しらみがそのなかへおっこちて、やけどをしました。それを見て、のみはわあわあなきだしました。
 すると、へやのとびらがいいました。
「のみさん、あんた、どうして、そんなにわあわあないてるの?」
「だって、しらみさんがやけどしたんだもの」
 そこで、とびらは、ぎいぎいきしみはじめました。
 すると、すみっこにいたほうきがいいました。
「とびらさん、あんた、どうして、そんなにぎいぎいきしんでるの?」
「これが、きしまずにいられよか。
   しらみさんがやけどして、
   のみさんがないてるんだもの」
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      『子どもに語るグリムの昔話4』(こぐま社)より引用

このしらみとのみの騒動は、色んなものを次々と巻き込み、おしまいには大水を引き起こし、最後は、その大水の中にみんな呑み込まれて終わる。

このお話を読むたびに、私もアダムとエバを思い浮かべる。

しかし、アダムからモーセまでの間にも、アダムの違反と同じような罪を犯さなかった人の上にさえ、死は支配しました。(ローマの信徒への手紙5:14)