風と、光と・・・

すべての人を照らすまことの光があって、世にきた。(ヨハネによる福音書1:9)

青き天鵞絨(びろうど)

私の歌作りは、一昨年の友の死から始まった。

十代を共に走りし友が逝く夏の光と風連れて逝く
死のこと等語り合いにし友逝きて十代の夏はるかに遠し

君の乗る銀河鉄道琴座過ぎ苹果のかをりただよひてをり
ここからは一緒にゆけぬサザンクロスひとりひとりの旅の降車場
宗教も科学も力持たざらむ別れがあればジョバンニよ泣け
天の川に列車走らせどこまでも君を乗せゆく青き天鵞絨
ふり向かば黒くびろうど広ごるを恐れゐて吾列車走らす


「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねぇ」ジョバンニが斯う云いながらふりかえって見ましたらそのいままでカムパネルラの座っていた席にもうカムパネルラの形は見えずただ黒いびろうどばかりひかっていました。(宮沢賢治=作『新編銀河鉄道の夜』(新潮文庫)より引用)


をはりがある方がいいと言ひし友よ君は終はつてどこにゐるのか
スランプの君が向かひし壁打ちの壁は今も母校に立てるを
真夏のテニスコートに持て来たりし檸檬の輪切り君に手向けむ

泣けばいい悲しめばいいジョバンニはカムパネルラと行けぬのだから

歌詠むは喪に服すこと繭籠もること沈みゆくこと深く深く
句作るは魂送ること解き放つこと別れゆくこと遠く遠く
歌詠みて君を思ひつ句作りて君を送らむ銀河の果てへ